何故アルクェイドは
真祖を滅ぼせたのか

 この文章は私がTYPE-MOONさんのネタバレ掲示板に投稿した記事を元に再構成したものです。

 真祖はきわめて不死に近い存在である。なにせ夜ならば志貴の直死の魔眼でもアルクェイドの死を視ることができなかったくらいである。にもかかわらず何故アルクェイドは真祖達を滅ぼす事が出来たのだろうか?
 同様に、堕ちた真祖は他の真祖によって滅ぼされてきたと言うが、何故それが可能だったのだろうか?
 考え付いた理由は以下のとおり。

 1:単純にアルクェイドの方が強かった
 2:世界からの力の供給を絶った
 3:空想具現化を使った

 1について。真祖といってもピンキリである。単純に力が優っている方が勝つのではないだろうか。
 志貴の直死の眼に関してだが、この能力は厳密に言うとなんでも殺せるわけではなく、その死を視れる存在でなければ殺せない。
 殺せるモノの上限がその時代の人間の限界に比例しているため夜のアルクェイドは殺す事が出来なかったのだろう。だがアルクェイドはこの問題とは無関係である筈。
 また、真祖を概念武装によって滅ぼすという行為は、そのために必要となる「自然をも滅ぼすレベルの概念武装」が実質存在しないため不可能に等しい。が、何故アルクェイドはネロを倒しきれないのかでも述べたように、アルクェイドは相手の復元速度を上回る規模の外的要因を与える事によって相手を倒してきたものと思われる。
 こちらの方法ならば力量次第で真祖をも滅ぼせる可能性はあるだろう。そしてアルクェイドならばそれだけの力を持っていても不思議はないと思う。
 真祖は世界からのエネルギー供給があれば不死身に近づくというだけであって、その上でなお復元が追い付かなくなるほどのの破壊力を持った力を叩きつけてやれば滅びるだろう。

 2について。これは志貴がシエルルート終盤でやった事と理屈は同じ。彼が"世界"そのものを殺してアルクェイドへのエネルギー供給を断ったように、自然に直接干渉する事が可能な真祖であれば敵へのエネルギー供給のみ停止させるという事も可能かもしれない。

 3について。空想具現化は人間のように自然から独立した存在には直接作用させる事は出来ないわけだが、これは裏を返せば自然の延長的存在である真祖には直接作用させる事が出来るのではないだろうか。
 あくまでそうかもしれないと私が考えているだけで絶対とは言えないのだが、それなりに根拠となるものはある。白本・青本の用語辞典にあった吸血衝動に関する以下の文。

 思うだけで世界の有り様を変えられる彼らが
 その『思う』という行為のほぼ全てを
 自身の制御のために使用するはめになった。


 シエル先輩の説明でも真祖が吸血衝動を抑えるというのは理性でどうこうというレベルではなく、その力を自身に対して用いているとあったように、これは思うだけで世界のありようを変える事が可能な空想具現化によって自分自身に干渉していたのではないかと考えたのである。

 2、3の場合は自然へ干渉する力の強さが勝敗を分ける事になるだろう。アルクェイドの場合は空想具現化の力も並ぶ者は無かったようである。

 ■アルクェイドの登場によって久々に千年城ブリュンスタッドが復活した
 ■アルクェイドと同じくブリュンスタッドの称号を持つアルトルージュは空想具現化ができない


 歌月十夜で明らかになったこれらふたつの事実がブリュンスタッド城を具現化せしめる真祖が他に存在しない、つまり空想具現化という分野においてアルクェイドに並ぶ真祖は存在しないという事を裏付けている。
 よってアルクェイドならば2、3のような手段で相手を滅ぼす事は充分可能であると思われる。

 1についての補足になるが、ピンキリといえば堕ちた真祖は吸血衝動を抑えるために力を割く事はしないために全力を出せる。故に真祖としてはキリの方であったモノでも堕ちてしまえば相当に強い筈。
 にもかかわらず堕ちていないアルクェイドが何故そんな彼等に優ったのか、という疑問が沸くかもしれない。
 これに関してはアルクェイドが当時生まれて間も無かったからだと考えれば説明がつくだろう。吸血衝動は蓄積し、長い年月を生きた者ほど大きくなるからである。
 つまり堕ちた真祖達を処断してまわっていた頃のアルクェイドに蓄積していた吸血衝動は微々たる物であった為にそれを抑えるのに力を割く必要が無く、故に彼等に対してハンデを負う事も無かったのだろう。
 そうなれば後は単純な地力の差がモノを言うわけである。

 アルクェイドが生まれる以前も真祖は堕ちた同族を処断してきたようであるが、これも堕ちた真祖を上回る力を持つ真祖が存在したからか、或いは集団で挑む事で総合戦力が相手を上回ったからこそ勝てたのではないだろうか。
 そして「朱い月」でも書かれているように、それでも手におえなくなってきた為にアルクェイドのような真祖が生み出されたのだろう。

 なお、アルクェイドは何故蘇生できたかの10/1加筆分でも述べている通り、真祖は肉体を滅ぼされても蘇生できるのでは、という疑問が沸いてくるかもしれない。
 だがアルクェイドですらそこから蘇生した段階で力の大半を失ってしまっていたのだから、彼女より力で劣る真祖達ではそうそうそんな真似はできなかったのではないだろうか。
 仮に蘇生できた真祖がいたとしてもそこをもう一度滅ぼしてしまえばもう二度目はありえないだろう。アルクェイドですら弱っている状態でロアに致命傷を与えられた時には、その後に志貴がロアを滅ぼした事によってロアに奪われていた力が戻らなければ復活できなかったからである。


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