ホクトはTBに感染しなかったのか

 IBFに入ったホクトがティーフブラウに感染したのかどうかを考えてみる。

 結論としてはどちらとも言えない。ティーフブラウに関する情報が足りないのである。が、仮に感染していたとしても周囲に抗体を持つ人間が多く居るので問題はないだろう。

 感染しなかったのだとした場合、いくつか理由が考えられる。以下、それぞれの理由に関して検証してみる。

 1:キュレイの作用
 2:つぐみから抗体を受け継いだ
 3:2034年のIBF内部には既にティーフブラウが残っていなかった


 1に関して。恐らくこれはないだろう。ホクトはサピエンスキュレイ種であるからキュレイウイルスには感染しない。よって自身の免疫機能によって抗体を作り出すという事はできない筈である。そもそもホクト・沙羅からは感染するかで述べた通り彼の体内には既にキュレイウイルスが残っていない可能性が高いと私は考えている。
 サピエンスキュレイ種の特徴と思われるものとしてホクトの身体能力や沙羅の突出した頭脳などがほのめかされているが、免疫機能に関しては特に言及されていない。むしろこのあたりに関しては通常の人間と変わりないと本編において明言されている。

 2に関して。赤ん坊は母親の胎内に居る段階で母親が持つ抗体を受け継ぐらしい。また、母乳にも抗体が含まれているようである。しかし、こういった形で得た抗体の効果は永続するわけでは無いようなので、この事のおかげで感染しなかったのだという可能性は低いと思われる。

 よって残るは3のみとなる。以前、用語辞典のウイルスの項でも述べたとおり、ウイルスとは生命体に感染せずに単体で増殖する事が出来ない存在である。よって武・ココ以外の生存者がおらず、そのふたりも抗体を接種している上にポッドの中に居る。つまり、IBF内においては増殖は不可能。
 故に後は自然に朽ち果てていくのみだろう。例えば風邪のウイルスの場合、温度・湿度によって変わるが空気中では数時間程度で大半が死滅するらしい。

 しかし全てのウイルスがこの例に当てはまるわけではない。ティーフブラウウイルスが感染する事無くどれくらいの期間生存し続ける事が可能なのかは不明である。
 だが、流石に17年となると非現実的なのではないだろうか。それに元々は熱水噴出孔に棲息していただけに、そことは著しく異なるIBF内の環境に適応できるかどうかはあやしい。

 なお、ティーフブラウは研究の過程で何度か手を加えられているようだが、その内容として「感染する事無しに生存できる期間の延長」は少々考えにくい。軍事利用目的の研究であるならば、むしろ殺傷能力・感染力・増殖能力などの強化に重点を置いた方が効率が良いと思われる。

 結論として3である可能性が一番高いのではないだろうか。


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