涼権の言動に関する考察
本編中の涼権の言動のウチで気になったモノについて考えてみる。順番はテケトー。
その1 警備室で恐い目をしていたのは何故か
ホクトの行方を探す為、彼が警備室の端末をいじっていたシーンでの事である。恐らく彼が今回の計画においてホクトの監視という役割を負わされていたからではないだろうか。
LeMUに居た空の場合は、記憶自体2017年当時とほぼ同じ状況にしてあったようなので計画そのものを知らなかったと思われる。となると、必然的に残る涼権でなければこの役目は果たせないだろう。
つまり彼はホクトの前ではごく普通の青年「倉成武」を演じつつもホクトの変化を常に観察していた。ところが警備室のシーンではそのホクトの目がない事から思わず素になってしまっていたという事ではないだろうか。
その2 正体を問い詰められて怒ったのは何故か
ホクトに一体何者なのか、何故倉成武のフリをしていたのかと問い詰められた際、涼権はお前こそ何者なのだと逆にホクトを問い詰める。
この時彼はやや感情的になっていたように見える。それまで完璧に「倉成武」を演じていた事を考えると珍しいかもしれない。一体何故か。
やはりこれはココの件が絡んでくるからだろう。彼はココに思いを寄せている。つぐみのカマかけにもひっかからないほど完璧な演技をしていた彼だが、ホクトの口からココの名を聞いた時だけは流石に動揺していたのもその為だろう。
そしてそのココも、尊敬する武も、ブリックヴィンケルが発現してくれないと助からない。更にあの時点で既にタイムリミットが近付いていた。
また、ブリックヴィンケルから直接指示を受けたのは優春の方である。彼女を信じて計画に従っただけである涼権にしてみれば彼女に比べてブリックヴィンケルの存在を信じる為の決め手にかける。
これらの事から察するに、流石の彼もかなりの焦りと苛立ちを覚えていたと思われる。あの場面で感情的になるのも無理からぬ事だったのではないだろうか。
その3 優秋シナリオの脱出前に探していたモノは何か
優秋シナリオ終盤の脱出前の会議室で武(涼権)に話しかけると、彼はそれまで探し物をしていたのだと答える。では彼は一体何を探していたのだろう。
その2で述べた事と併せて考えるに、やはりココ(或いは武)だったのではないだろうか。あきらめられるわけがない、あくまで戦略的撤退なのだ、という言動からもそうである可能性が高いと私は思う。
その4 変換機に関する発言の意図は何か
少年視点の序盤で、館内気圧が1気圧になったのだから耳に付けた変換機を外しても良いのではないかと言って空を困らせるシーンがある。
2017年の出来事をできるだけ忠実に再現したいのならばこれは余計な言動であるようにも思われる。かといって彼がうっかり口を滑らせたとも思えない。
もしかしたらこの時彼は、空に話しかけながらもその意識はホクトの反応に向けていたのではないだろうか。実際この件を空と優にごまかされるとそれ以上深く追求しはしなかった。
つまり、2017年の出来事をトレースしてブリックヴィンケルを錯覚させるだけでは意味がない。その上で彼に自分自身が何者であるか自覚させる必要がある。「ホクト」が知る筈のない事を知っているという事実を彼に気付かせる為、あのような事を言ったのではないだろうか。
もしかしたらこれにひっかかったのをキッカケとして予定より早く発現してくれればもうけもの、くらいに思っていたのかもしれない。
その5 憩いの間での酒とひとり言の理由
少年視点で彼が憩いの間でひとり酒を飲んでいるシーンがある。しかしただ飲んでいるだけだったのならばまだしも横にもうひとつ蓋をあけたビールを置き、しかもまるでそこに誰かがいるかの如くぶつぶつと何かをつぶやいていたらしい。一体これはなんのつもりだったのだろうか。
やはりこのような妙な行動をとるからには、何か原因となった出来事がある筈だろう。そこでこのシーンの直前に何があったのかを思い返してみる。となると、一番大きな事件はつぐみと沙羅のケンカである。
一見このケンカ、涼権にしてみれば全く原因がわからないものであるかのようにも思える。だが原因がつぐみと沙羅のケンカの原因で考えた通りの理由であったと仮定すれば、本当は全てを知っていた涼権ならば沙羅の言う「あの人」とは武の事であるとすぐに察しがつくのではないかと思われる。
完璧に演技をこなせるよう訓練されたが故か、あの場ではその事を知っているかのようなそぶりは明確には表に出さなかったが、内心かなり動揺していただろうと思われる。
涼権が武を心から尊敬しているのはグランドエピローグからもよくわかる。だからこそつぐみと沙羅の口論を聞いた事から彼の悲劇を思い出していたたまれなくなってしまい、酒で気分を紛らわせようとした。
或いは武の家族であるつぐみ、沙羅、ホクトの現状を目にしても何もしてやれないもどかしさ、沙羅のつぐみに対する誤解を解いてやりたくても、計画の為には黙っていなければならない辛さからというのもあったのかもしれない。
そして最初は何とはなしに武の分の酒を横に置いてひとり酒をあおっていたが、そのうちについつい飲み過ぎてしまい、やがて武と一緒に酒盛りでもしているかのような妄想を抱くほどに酔っ払ってしまった。
……そのような事もありえないではないだろう。憩いの間での奇行の真相はそんなところだったのではないだろうか。
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