ひぐらしのく頃に
祟殺し編推理・考察


もうひとりの圭一と何故か居るという叔父

 ■口裏合わせ?
 まず、圭一の犯行は魅音にはバレバレでしょう。迂闊にも前日の電話で犯行をにおわしちゃってるので。
 ならばその結果圭一をかばう為のアリバイ工作として学校のクラスメイト達が口裏を合わせていたのだと考えれば辻褄は合うだろうと思う。
 例えば魅音ならばそれをやろうとする動機は確かに存在する。沙都子の叔父の殺害を決意するよりも以前に魅音に相談した際の圭一の発言。曰く、例えこれまでの祟りが魅音の仕業であったとしても、魅音が自分の親友である事には変わりない。警察に追われるような事があれば匿ってやるし、アリバイ工作だってしてやるとか。
 元々圭一に好意を抱いていた魅音である。しかもそれを聞いた時の魅音のリアクションを見るに、彼女ならばもしも逆の立場、つまり圭一が犯罪を犯した場合、その理由次第では全力を以って彼を守ろうとしたとしても不思議は無いかもしれない。

 ■圭一だけの為?
 魅音達は翌日圭一が登校して来た時にまず真っ先に祭の話を、さも圭一がそこに参加していたかのように語りかける。圭一はそれに違和感を覚え、自分は祭には行っていない筈だと言いかける……が、周囲の勢いのせいか口を挟めない。
 それにこの時彼等は会話の中でいちいち圭一の行動を事細かに解説している。どうも、その場の会話で圭一に喋らせる事なく前日の祭に圭一が居たという事実を作り上げようとしていたようにも見える。

 そう考えるとこの場面での口裏合わせは本当に圭一だけの為だったのかどうかが疑問である。そもそも圭一を警察からかばいたいのであるならば、最初から圭一に「そういうシナリオにしてあるから警察に何か聞かれてもそれにそった回答をしておけ」とでも説明しておけば良かったのではないだろうか。
 ならばこの場面でのクラスメイト達の行動の意図はなんだったのか。考えられるとしたら、「本当は圭一が祭に参加していなかった事」を知られたくない相手があの場にいたという事ではないだろうか。
 となると、その時祭の話に参加していなかった沙都子が気になってくる。

 ■祭当日の沙都子の行動
 祭に誘われて神社までは付いてきたがそこから家に引き返した事と、圭一は沙都子の叔父がひとりで居るタイミングを見計らって電話でおびき寄せている事と、襲撃した場所は北条家から別の場所へ行く際、必然的に通る道である事。
 これらの事から沙都子は帰宅途中、タイミング的に「圭一が叔父を襲っている場面」か、「不自然に放置された叔父のバイクと草むらに寝かせてあった圭一の自転車」、そのいずれかを目撃している可能性が高いという事になる。

 では、その場合沙都子はどのような行動に出るか。
 目撃したのが前者であるのならば、人を呼ぶ為に急いで神社に戻るだろうか。しかしそれだとそこで圭一が居ない事を沙都子自身が確かめる形になるので、翌日魅音達が口裏合わせをする事もなくなるだろう。
 ならば他に考えられるとしたら……目の前の現実を受け入れきれなくて、そのまま逃げるように帰宅するといった所だろうか。これは見たものが後者であったとしてもあり得るかも知れない。

 以下は更に妄想に妄想を重ねた物ですが。

 その場合現実に叔父はいつまで経っても帰ってこない。そこで沙都子は魅音に電話をし、自身が見た事を打ち明け、相談する。そこで魅音は圭一をかばう為に「圭一は祭に来ていた」「だから圭一が沙都子の叔父を襲っていただなんて何かの間違いだ」という嘘をつく。
 それを聞いた沙都子は、先刻自身の目で見た物よりも、その自分にとって都合の良い嘘の方を現実として認識し、存在しない筈の叔父を存在すると思いこんだ……という事ならば辻褄は合いそうな気がする。
 どうもTIPSの恨み帳を読む限り、沙都子は精神に異常をきたしていたかのように思えるので、すんなり都合の良い嘘を信じ込むという事もあり得るのではないか……とも思ったわけですが。
 或いは見た物が襲撃の瞬間ではなくて放置されたバイクであったのならばまだそうなる可能性も、なんて。

 ……正直自信無いです。

 とりあえず私は現時点ではそういう経緯があって、翌日の魅音達は沙都子に嘘をつきとおす為にああいった行動に出たのではないか、と考えています。

 ■急造のシナリオの穴
 実際には圭一も想像している様に、大雨によって祭は途中で中止されたと考えた方が良い。だから圭一が祭に顔を出していたとしても、以前メモの方にも書きましたが魅音達の言うように長い間あちこちで大騒ぎしたり、ましてや終盤に行われる奉納演舞を見る事など出来た筈はない。

 この矛盾に関しても上記の仮説通りであったとしたならば納得がいく。

 魅音が沙都子から相談を受けて咄嗟についた「圭一は祭に出ていた」という嘘。複数のクラスメイト達との口裏合わせによってそのリアリティを増す為には、当日の圭一の行動と周囲の反応を緻密に作り上げなければならない。しかし、複数のクラスメイトと電話なりで打ち合わせをする時間も必要だし、シナリオ作成に割ける時間はあまり無い。
 つまり、短時間で慌てて組みたてたシナリオであったからこそ片手落ちの内容だったという事になるのかもしれない。

 なお、魅音にしてみれば出来る事なら翌日学校へ行く前に圭一に電話をして、あらかじめシナリオを伝えておきたかった所でしょうが、ご存知の通り圭一が帰宅したのは夜遅くなってから。
 そういうわけで昼過ぎになって登校してきた圭一を見て魅音達は動揺。ドアを開けた瞬間一瞬クラスが静まり返っていた理由のひとつもそれだったのではないか、などと考えてみたり。そして慌ててああいった行動に出たのではないだろうか。



雛見沢大災害について

 ■人災か天災か
 大規模な自然災害を人為的に起こすという事は、可能性はゼロではないかもしれないが、普通に考えて無理がある。しかし実は本編がそういった自然災害が発生する一歩手前、あやうい均衡が保たれている状況であったのだとしたら、最後の一押しが人為的な物であったとしてもあのような大災害は発生しうるかもしれない。

 その危うい均衡が保たれている状態であるという伏線があれば良いのだが……悟史の金属バットが沼に沈んだ事などはどうだろうか?
 金属バットは中空構造なので水に浮く筈。……といっても私の家に今金属バットが見当たらないので風呂なりで実験する事は出来ないんですが……少なくとも理屈の上ではそうである筈。にも関わらずバットは沈んだ。
 この場面を読んだ時点で違和感を覚えていたんですが、更に読み進めてあの沼からガスが発生していたという事が発覚した際に、頭の中で昔見たとあるテレビ番組の内容が結びついてピンと来た。
 それは特命リサーチ200Xという番組で、所謂バミューダトライアングルにて事故が多発する原因に関するひとつの仮説を立てられていたんですが、それは海底のある物質が気化して大量の気泡が発生する事によって、その区域だけ浮力が減少していたのではないか、という物でした。
 実際にバミューダトライアングルで発生した事件の原因がそれであったと実証されたかどうかは知りませんが、気泡の発生により浮力が減少するという事自体は番組内で行われていた模型を利用した実験を見た限り、現実に起こり得るだろうと思います。
 つまりあの場面で金属バットが沈んだのは、大災害に至るほどの量ではなかったとはいえ既に地下からガスが発生していた事を示す伏線だったのではないか、などと考えたわけです。

 ただしこの仮説には問題点がひとつ。バットが沈んだ事に関して意図的にそう書いたのかそれともミスだったのかがイマイチわからない事。竜騎士07さんがどんな事を知っていてどんな事は知らないかなんてわかりませんし。
 私もこの現象に関しては前述の番組を見て初めて知りました。知らなかった頃に「水の中に気泡が発生していた場合の浮力」に関して問われたら色々と推測する事によってそれなりの回答はできたかもしれませんが、しかし知識自体は持っていなかったんです。単に私が無知だっただけかもしれませんが、しかしあんまり多くの人が普通に知っている現象だとも思えないんだよなあ……。
 しかし、そんな風に考えていた所、後に発売された私的捜査ファイル(仮)を読んで、竜騎士07さんはかなり博識な方だと今まで以上に思うようになりました。なので個人的に意図的にそうしたのだ、に一票。

 ■自衛隊の発表が虚偽である可能性は?
 少なくとも圭一を助けようと必死になっていた隊員までもがグルだったとは考え難いです。それに、かなりの人数に及ぶ隊員全ての口止めをするなんて、私が黒幕だったらそんな危なっかしい事はやらないです。どこから情報が漏れるかわかったもんじゃない。
 なのでそれはあんまり現実的じゃあないとは個人的に思うんですが……沼を調査した面々のみ黒幕の息がかかっていたのであれば或いは……?

 ■人災であるのならばどうやったのか
 地下で泉同士が繋がっていて云々という仮説を赤坂さんが立てていたが、それに近いもので沼自体に装置が設置されているわけではなく、地下のガスだまりに干渉しうる装置が存在していたらどうだろう。これならば自衛隊の沼探索時には不審物が発見される事はない。
 ではその装置がある場所は何処だろう。園崎家の敷地の地下?
 そもそも園崎に拷問部屋があってそれが雛見沢の暗部であるという事を描写したかっただけならば、別にそれがあのような地下に構築された広大な施設などである必要もない。屋敷のどこかにそういった部屋が隠されていたのだとしても構わない。逃走経路しかり。
 「地下に大規模な施設が存在する」という事がこの件に関するヒントなのでは、とも思ったのだが。

 ■政府がやっちゃった説
 これから書くのは、雛見沢大災害が半分自然災害であった場合と仮定して推理を進めようと決めた為にあまり重視していなかった仮説。加えて思い付いておいてなんですが自分でも与太話にしか思えなかったからだというのもあります。そんなわけで上で書いている推理とは方向性が違います。

 まず、この仮説では雛見沢大災害の正体は自衛隊による雛見沢への毒ガス散布であり、本当は鬼ヶ淵沼からガスなど噴出していなかったという事になります。
 では、何故自衛隊がそのような行動に出たのか。それは富竹さんが防衛庁所属で、雛見沢を調査していた自衛官であったという仮定に基づいています。

 私的捜査ファイル(仮)によると赤坂さんが富竹さんを公安調査庁所属の調査員ではないかと推測しています。実際彼の鬼隠し編での圭一に対する言動からも何者であるかはわかりませんが雛見沢を調べていた可能性は高そうな気がします。また、彼は雛見沢は排他的な村で余所者にとっては危険な場所であると認識しているようにも思えます。
 では雛見沢を調べていたのはともかくとして、実際どこの組織に所属していたのか。赤坂さんの推察がそのまま正解だったのだろうか。
 そこでふと思い出したのが大石さんが富竹さんは体格が良く、もしも喧嘩するなら人数を揃えたいと言っていた事。そこからなんとなく、実は自衛官だったらそれも有り得るんじゃないだろうかと思ったのでした。あとそういえばお祭りでの射的ではキッチリ熊に弾をあててましたっけね。
 そうだと仮定すると、総武線沿線と推測されていた彼の住まいは津田沼の防衛庁宿舎だったりするのかもしれない。
 都内の住民台帳に富竹ジロウなる人物の名は存在しないそうですが、千葉まで調べたらまた結果は違っていたのかも。或いはやっぱり偽名だから結果は同じであったという可能性もあるかもしれませんが。
 ひょっとしたら赤坂さんが前述のような推測をしていたのは、竜騎士さんからの私達に対する「富竹さんが政府の情報機関に所属している事」に関するさりげないヒントだったという事になるのだろうか。

 さて、そんなわけで富竹さんが自衛官だったと仮定しますと、彼は当然調査結果を上に報告していたという事になると思われます。ですがその報告内容にある雛見沢の姿とはどのような物であったのだろうか。
 ご存知の通り彼は鷹野さんと交流がある。本人は彼女のオカルティックな話を信じてなどいないようにも見えたが、聞かされている内に実は結構本気にしていたというのはどうだろうか。何故なら上で述べたように彼は雛見沢は排他的で余所者にとっては危険であると認識している事が伺える部分があるからだ。
 鷹野さんの話はあんまり信じていないように見えて、あれは実は結構信じて恐がっていたのだが表向きは強がっていただけだったとか?
 となると、もしかしたら彼から上層部に報告される雛見沢像は、例えば鬼隠し編の圭一、綿流し/目明し編の詩音、そして大石さんなどがイメージしていたような、影で園崎だの、オヤシロさまを妄信する危険な一派だのが暗躍する、鷹野さんの研究内容の影響を強く受けたモノであった可能性も考えられるかもしれない。
 だが勿論上層部もその報告内容だけでなんらかの動きを見せるには至らなかったんじゃないかと思います。ところがそこへ富竹さんの奇怪な死が伝えられる事となる。それによってそれまでの富竹さんの報告が突然気味が悪いくらいに現実味を帯びてくる。
 そんな中やがて発生する、梨花の宗教的儀式を想起させられる無残な死。これが最後の後押しをする形になったのではないだろうか……と。

 仮に真相がこの通りであったのだとすると、圭一が気絶していた沢にもガスは流れ込んでいた筈なのに無事だったのは、実際は沼からガスが発生したわけではなかったからだと言う事になる。現に圭一が異臭を感じるようになるのは沢から上がってからです。少なくともあの沢にはガスは存在しなかった可能性が高い。

 まあ、以上なんですが。多分祟殺し編を読み終えた段階でこんな仮説を聞いても一笑に付す人がほとんどだったんじゃないかとは思いますが、罪滅し編まで読んでみるとちょっと捨て置けなくなってくるような気がしてしまいまして。
 何故ならここまでくるともうこの「ひぐらしのなく頃に」という作品と「思い違い」という要素とは切っても切れない関係にあると思わずにはいられない人が大半なんじゃないかと思うわけで。
 私も鬼隠し編を圭一の勘違いであったと推理していたわけですがそう推理した直後、それではこの鬼隠し編はひぐらしのなく頃にという作品の中でどのような位置付けであるのかを考えた際に、「思い違い」という要素が何か重要な手がかりである事をヒントとして提示する役割にあるのではないかと推測しました。
 だから当時今回のような仮説も考えたりしたわけではありますが、しかしやはり流石にそれはちょっと現実味が無い気がしたので、「思い違い」は怪現象を作り出す一要素程度でしかないのだろうと判断していました。
 が、綿流し編/目明し編の犯人である詩音が思い違いによって暴走していた事、マンガ版連載開始時に付いて来たポストカードに書かれた詩でも改めて「思い違い」が強調されていた事、ファウストにおけるインタビューでも竜騎士さんがこれまた「思い違い」について触れていた事。そして今回の罪滅し編。
 こうなってくるとどうも今回の仮説みたいなのが意外と真相っぽく思えてきてしまう。そして罪滅し編の内容を改めて思い返すと、色々とその裏付けになりそうな事柄が結構見受けられるような気がする。

 例えば竜宮レナという一少女の妄想が起点となって、最終的に警察や園崎という大きな組織を動かすに至っている。この事が雛見沢大災害の真相は誤解に誤解が重なった末に政府という巨大な組織が動いた結果である事のヒントになっていたのでは……とか。
 不法投棄のトラックは深夜ダム現場にこっそりやってくるらしいという話は、ダム現場はあまり人が寄り付かない事と不法投棄のトラックを目撃したという話はない事と合わせて考えるに、雛見沢は自衛隊が秘密裏に侵入してこのような作戦の準備をする事を可能とする環境である事を示す伏線なのでは……とか。
 私的捜査ファイル(仮)によると自衛隊による雛見沢の家屋の物色がされた疑いがあるようですが、これは政府が鷹野さんの研究ノートにあった寄生虫なりなんなりを探していたからだと解釈できる……とか。その場合学校で起こったらしい発砲事件もなんらかの関係あり?
 隠しTIPS「悪魔の脚本」によると沼がコンクリートで固められていたらしいですが、これは本当はガスの噴出など無かったという証拠を隠蔽する為だった……とか。
 現地に居た自衛隊員の健康調査もまた政府が寄生虫説を信じちゃってた事の裏付けである……とか。
 雛見沢の異様に長かった封鎖期間は、存在しない寄生虫を探していた為に調査期間が長引いた事と、焦って自分達の行動の痕跡を消そうとした事による……とか。
 赤坂さんの「マインドコントロール」の話は数年にわたって鷹野さんの話を聞かされた富竹さんの変化に関するヒントでもあったのではないか……とか。

 なんかこんな感じにパズルのピースがパチパチとはまっていくんですよね。でもそう考えている私の姿が実は罪滅し編で鷹野さんのノートの内容に関して同じくパズルのピース云々と言っていたレナそのまんまなんじゃないかともどこかで思っていたりもするのだが……。


 以下、作成中


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