メルブラトーク(6)

 MELTY BLOOD(メルティブラッド)に関するいつものネタバレトーク。
 順番はテケトーです。

 その51 第六識

 その50までの考え方でいくと、第六法は仏教でいうところの第六識にちなんだ名であるとも考えられるかもしれない。そもそもタタリが実体を得る為に必要とした「噂」という物は人々の「意識」から発生した物といえますし。七夜志貴やネロが実体化したのも志貴が彼らを明確に「意識した」為だからですし。

 もしそうだとしたら、しつこいようですが私はthe dark sixと六人姉妹は何らかの関係があるかもしれないと前々から言ってるわけですが、この話と第六法を結びつける事ができるかもしれない。
 六人姉妹の末妹、つまり「第六」は、「審判」と称されたらしい。審判というものは目の前の状況の是非を判断するのが仕事だと思う。一方第六識たる意識は五識(五感)によって得られた情報を分別、判断するという役割を果たす。この辺りが似てるような……けど拡大解釈でしかないような。
 要するに、the dark sixは仮に現段階で五識まではそろっていたとしても、それらを統括する意識がないので未完成なんじゃないかという考えなわけです。


 その52 魔法は作る物?

 魔術師は須く魔法、根源を目指すもの。そして空の境界において橙子さんが、現代の魔術師には根源に辿り着いて新たな秩序=魔術系統を作り出す事はできない、というような事を言っている。
 更に今回シオンは、魔術系統は完成しているとか、魔力回路は根源へ繋がる道であるとかいうような事をいっている。

 つまり、魔法というのは新たに作らなければならない物だという事なんだろうか。元から世界に存在しているがまだ誰にも知られていない、その魔法の為の回路を見つけ出すというのではなく、その魔法を可能とするそれまで存在していなかった新たな魔力回路、つまり根源までの道を作る事によって行使する事が可能となる。
 だからこそ、新たに魔法が誕生するような事でもない限り、シオンが言った通り「魔術系統は完成している」という事になるのな?

 だとすると世界の触覚である朱い月がそれをまるで知らなかったというのも、その根源への道は人間が後から新たに作った物であったからなのだと考えられるかもしれない。
 魔術は有る程度知れ渡っていただろうけれど、魔法は本当に使い手以外その詳細は知り得ない。それは朱い月とて例外ではなかったのではないかと思われる。


 その53 システム

 その52で取り上げた橙子さんの言葉にもありますが、新たな魔術系統というのは新たな秩序であるらしい。魔術はその名の通り術ですが、そこには独自の秩序が存在する。
 そして魔法の「法」という言葉に、物事に「秩序」を与えるもの、という意味がある。いわばシステム。魔法が使用可能になる為には新たな根源への道が作られる必要があるのでは、と述べましたが、もしかしたらそれの実体は「システム」だったのではないだろうか。
 つまり、新たな魔術系統を作る=新たな秩序を作る=その秩序を与える新たなシステムを作る、という事に。

 そしてその詳細が他人に知られればただの術となる。知られなければ使い手が独占するシステム。よって使い手とシステムはほぼイコール……とするのは流石に拡大解釈だろうか。そうだとすると「ワラキアの夜が第六法になる」という言葉にも説明が付く気がしたんですが。けれどこれじゃ魔法使い=魔法になってしまうか。

 まあともかく「魔法」も「第六法」同様、その単語に含まれる「法」はどちらも「システム」を意味していたのではないかと思ったのでありました。


 その54 システム(2)

 その53までの補足になりますが。魔法を使えるようにする為に「システム」を新たに作り上げるという事。これは自分だけが知るルールを作るというレベルではなく、多分世界その物に新たなシステムを付加するという事ではないかと思うわけなんですが、その辺に関して。

 なんらかのゲームのルールはそのゲームの参加者達がそれを守ろうと意識する事によって成立する。が、そういうのではなく、例えば全ての物には重さがあるとか、温度があるとか……色々あるけれど、そのルールを守ろうとか破ろうとか考える以前にどう足掻いても従わざるを得ない法則。世界に存在するモノである限り、それに逆らえない。そういった物なんじゃないかと。
 ゲームでの例でいうならば、現実世界で行われるゲームではなく、テレビゲームにおけるルールがこれに近いかも。フラグが立たない限りどう足掻いてもストーリーを先に進める事ができないとか。

 そういえば空の境界の最後の方で『両儀式』が自分はこれらの法則・秩序を作りかえる事さえ出来る、というような事を言っていましたが。根源その物である『両儀式』がそうやって世界その物を作り変える事が可能ならば、根源に辿り着いた魔法使いが新たな秩序を作り出せても不思議は無いかもしれない。
 例えば時間は過去から未来へと流れ続ける物であり、不可逆。しかしその時間より上位である根源に至る事によって、時間を逆行するための「法則」を新たに付加し、これに従う事によって時間旅行の魔法が使用可能になるとか。まあ時間旅行は既に魔法では無くなっているっぽいですが。


 その55 固有結界と魔法

 固有結界は範囲・期間が限定されているとは言え、「システム」そのものが組みかえられているのだから"異"界と称されるのかもしれない。対して魔法はシステムを追加した事によって世界そのものが丸ごと全て変わってしまってるので、比較対象など無いのだから変貌後の世界を"異"界などとは言わないと思う。
 だったら、固有結界を作る魔術って元々は魔法の出来損ないみたいなものとでもいうか、世界に魔法システムを追加する為の技術と同じ物だったという可能性も考えられるかもしれない。
 無論両者は全くの別物なのかもしれないんだけど、とりあえず今回のはそうだったとしたら、という話。

 魔法使いになれるのは生まれ付き「  」に繋がっていて、かつそこに辿り着いた者のみ。つまり、世界よりも上位にある「大元の一」から組みかえてやるのだから、魔法のシステムは構築された後も世界からの修正をうけないし、世界全体をその影響下に置く事が出来る。
 しかし固有結界を作る術はその下位。世界と同位、もしくはそれより下から無理矢理書き換えている為に固有結界は修正を受けるし、使い手の周辺一定範囲しか影響下に置く事が出来ないとか。
 つまり、両者とも基本的にやっている事は同じで、ただ干渉する場所の「高さ」が違うだけだという可能性もあり得るのではないか、などと思ったり。

 魔術と言うのは元々は魔法だったというけど、こう考えると固有結界を作る為の魔術に関して言えばこれは最初から魔法ではなかったのかも。世界にシステムを構築した結果引き起こせるようになる奇跡が魔法であって、システム構築の為の技術自体は魔法とは言わないような気がするし。


 その56 固有結界を利用した魔法(2)

 アルクェイドが千年後の月を持ってくるなどという荒業をやってのけていたので、固有結界の中においてならば魔法とされている事と全く同じ奇跡を引き起こす事は可能なのかもしれない。しかしそれは魔法とみなされるのかどうか。

 何度も書いているように、魔法というやつは使い手自身が世界に構築したシステムにのっとってるんだと思っているわけですが、このシステムは世界の側からみて修正対象にはならないのだと思う。何故なら魔法使いによって構築されて以降、世界自体がそれを「アリ」だと認めるようになっているわけだから。よってこれは「歪み」ではないのだと思う。
 しかし固有結界の中という「異なる現実」や荒耶が創り出したような異界は、世界の中にありながらその法則を「歪めた」ものである。歪んでいるわけだから、それだけで通常世界では出来ないような事でも普通に出来てしまう。
 ならばこれらに頼って引き起こした奇跡では、それが魔法に匹敵するレベルであったとしても魔法とはみなされないのかも。この場合「魔法の域」という言い方をされるのではないだろうか。

 つまり通常の世界と異なる法則が支配する状況下において引き起こされる奇跡は、例え魔法と全く同じ内容だったとしても、言うなれば異界における魔術であって通常世界における魔法ではない。だからそれがいかなるものであろうと魔法とはみなされないんじゃないだろうかという事です。


 その57 魔法は封印指定なのか

 シオンいわく青子先生はロンドンの問題児である。てことは、彼女は普通に魔術師協会に所属している事になると思われるわけなんですが……じゃあなんで「魔法使い」というのは「封印指定」の対象にならないんだろうか?

 思うに、魔法というのは魔術師が最終的に到達する物である。つまり、それ以上の神秘は存在しないという事になる。
 そして封印指定。これは後にも先にも現れないであろうと思われる希少能力を保存する為の物。よってこれを受けた魔術師は更に上を目指す為の研究を行うことまでも禁止される。多分、研究を続ける事によってそのレアな能力が失われる可能性があるんでしょう。何故なら希少度と術のランクが必ずしも比例するとは限らない。あるレアな術のランクを更に高めたら逆にありきたりな魔術になってしまう可能性も有り得ないとは言いきれない。
 これらの事を併せて考えるに、魔法という物は封印指定する必要自体ないんじゃないだろうか。最高の神秘であるが故に、使い手はもうそれ以上の研究をする必要はないでしょうから。協会側にとっても更なる研究によって術の希少度が下がる心配をする必要はないんだと思う。

 ……ていうかむしろ封印指定にせよ魔法にせよ、それをどうやって協会側は認定しているのかという事の方が不思議ですな。他者に研究内容をもらすような事はありえない筈なのに。


 その58 魔法と魔法の域

 このふたつの違いはなんだろう。現代文明においてどう足掻こうが不可能である事が魔法。資金や時間、それに技術等、現実には退ける事が不可能であろうあらゆる制約を取っ払ってやれば可能である事が魔法の域、という事になるんだろうか。事実上現代においては不可能だが、どうすればそれが可能であるか理論の上では明らかにされているとか。

 時間や空間をどうにかしてしまう事は理論の上では可能だった気がする。
 私はあまり詳しくはないけど、物体の速度が上昇すれば時間の流れは遅くなっていき、光速に達した瞬間に停止、それを更に超えると今度は時間が逆行していくという。
 空間というのは実は重力が発生している限り程度の差こそあれ常に歪んでいるらしい。ブラックホールは光の進行方向すらも捻じ曲げるというけど、確かあれは「光が落ちている(引き寄せられている)」のではなく(光に質量は無い)、馬鹿みたいな重力によって空間が歪曲した結果、光はそこを「直進」しているつもりでも「曲がって進む」事になってしまうと、そういうような事であるらしい。
 では、光速を超える速度で移動したり、超重力を発生させる技術さえあれば、時間と空間を操ることすらも可能になるという事に。しかしそんな技術はない。
 もしもブラックホールを発生させる設備を建造するとしたら、という話を昔どこかで読んだ記憶があるのだけど、それによれば常識外れの大きさ、強度、エネルギーが必要とされていたと思った。正確な数値は思い出せないけど、いずれも現代の人類には絶対不可能なレベルであったのは間違いない。

 けれど事実上不可能ではあっても、一部の人達はどうすればそのような現象が発生するのかを「知っている」わけだ。
 魔法や魔術は他者に知られると性能が落ちる。よって現代の人類の内でその原理を知る者が居るが故にその現象を引き起こす術は「魔法」とはみなされない。しかし、知っていてもそれを実現する力が現代の文明には無い。故に「魔法の域」とされるとか。
 そうであるならば時間旅行はズェピアが、荒耶の空間干渉は橙子さんが「魔法の域」と言っていたのも道理だと思うんですが。

 唯一明らかにされている魔法であるところの「蘇生」ですが、これは確かに時間・空間の件と違ってそれを可能とする理論すらも存在していないと思う。といっても私の知る範囲に限っての話ですが……。
 クローン技術は蘇生ではなくてあくまで新たな個体を誕生させるものですからね。むしろこちらは橙子さんの術に近いでしょう。


 その59 超越種の能力と魔法

 仮に超越種が能力として現代の文明のレベルでは実現不可能な事象を引き起こしたとしても、それを魔術的に可能としたら魔法と言えるのだろうか。
 これまで述べてきた事から、私はこの場合魔法にはならないのかもしれないと思った。何故ならその超越種がそういう能力を行使できる時点で、世界にはその為の秩序が既に存在しているという事になるのでは。


 その60 魔法の無かった時代で魔法を使えるか

 魔法が新たに作られた秩序に従ったモノだというのであるならば、それが存在していなかった過去に移動し、魔法を行使しようとしたらどうなるか。
 魔法・魔術は根源への道が存在するから可能なわけだけど、その根源というやつは全ての「大元の一」であるが故に、どこの時代からも繋がっている。ならばその魔法の為の魔術回路を有し、手法さえ知っていればどの時代においても起動する事が出来るという事になるのだろうか?

 しかしそれは魔法使いが根源に辿り着いて、直接そこをいじくったのだとした場合の話。私はあくまで根源=世界ではなく、「世界すら含めた全て」の上位に位置する大元の原因であると考えてます。よって魔法使いは根源という高みから「世界」を作り変えたのではないかと。もっとも、根源そのものに干渉できるのかどうかすらわかりませんが。

 だとすると、新たな秩序が作られる以前の世界において魔法は発動しない可能性が高いのかも。
 もしも発動するようであれば、その魔法を作った魔法使いは根源から下位にある「過去現在未来全て含めた世界」をまるごと書き換えた事になる。しかしそれではその魔法使いが新たな秩序を作りだした時期よりも過去においてそれを探し当てる事さえできれば、根源にたどり着く資質がない、つまり魔法使いとしての資質がない者でも魔法使いになれる可能性が出てきてしまうと思う。

 だから魔法使いは世界の「ある時点」に干渉し、そこを起点として、そこよりも時間軸において下流にあたる世界法則のみを書き換えているのかもしれない。


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