らっきょとーく(10)

 らっきょこと空の境界(完全版)を読んで思ったことをツラツラと書いていくという。いつものやつです。
 例によって順番はテケトーです。

 その91 荒耶は転生したのか?

 前回まで荒耶が転生したものとして話をしておきながら、今になってそれは本編からわかる範囲だけでは断定できないかもと思うようになりました。
 転生説が断定できないというだけで逆に完全に否定できるとも言いきれないのですが、とりあえずもうひとつの仮説を挙げておこうと思います。

 まず転生するんじゃないの? と思った根拠は、彼が台密の僧であった事と起源覚醒の術を扱える事からその知識の応用によって転生が可能であるとしても不思議はないかもしれないと思った事。
 そして今回滅びる際に次に会うのは次世紀だと言っていた。そしてその為には転生する以外にないだろうと思ったからなんですが…。

 しかしその90でも書いたけど彼は橙子さんのように予備の体を用意せずとも生き長らえている。意識だけの状態で生きていけるようだ。
 そして荒耶は最後に予備の体を用意していないから次に会うのは次世紀になるだろうといっていた。
 …よくよく考えてみるとこれだけでは転生すると私が思った根拠となる事柄を考慮に入れても転生という手段で彼が復活を試みたとは断言できないんですよね。
 だからもしかしたら意識だけの状態のまま何らかの手段で新たな肉体を調達するのに次世紀までかかるという事だったのかもしれない。


 その92 ロアの転生に関する考察

 ロアの転生のメカニズムに関しては色々と疑問点がある。特に気になるのがシエル先輩と四季が同時に存在していた事だろうと思う。なぜ、転生体が同時代に複数存在したのか。

 最初はあくまで四季は特殊な例であって元々転生体として誕生したわけではなかったところ、シエルルートで四季から志貴へとロアが乗り移ったのと同じ要領でシエル先輩の死後に四季へと乗り移ったのだろうと考えていましたが…秋葉が幼い頃、四季の事を遠野という人間でないモノとはまた違った存在であるような気がしていたと回想しているのでどうも違うようです。
 つまり、遠野とも違った存在だと感じたのはロアの転生体であったためであると思われます。

 その後歌月の「朱い月」を読んで、ロアの転生は朱い月の転生に似た方式なのではないかと考えるようになりました。
 つまり朱い月が全ての真祖が自身を受け入れる部分を持って誕生するよう仕組んだように、ロアは自身を受け入れる部分を持った人間が一定の確率で誕生するように仕組んだんだろう、という事です。
 これならば転生体候補が同時に複数存在していてもおかしくはないでしょう。複数現われる転生体候補の中から自分の選んだ家柄に生まれている者を選ぶ、と。

 ただし、これだと更に別の問題が生じたりします。一体どうやってロアを受け入れる部分を持った人間が誕生するように仕向けたのか。
 少なくともシエル先輩が誕生するまでにはおよそ100年の空白がある。つまり必ずしもある代のロアが生きているうちに次代のロアが存在しているというわけではないと思われる。
 ということは恐らく転生体候補は自動的に発生しているという事になるのだが…しかし自動的にといってもどうやって? という事。
 第三者の協力によるのか?
 しかしそれではその第三者をどうにかすればロアの転生を阻止できてしまう。
 初代ロアがそういう現象を起こせる魔術的機構を設け、どっかに隠している?
 これも第三者の協力による場合とさしてかわりませんな。問題のカラクリを発見して無力化させてしまえば良い。
 
 で、ここに来てようやく空の境界です。空の境界で出てきた起源の話を持ってくれば上で述べた問題をクリアできそうな気がするんですよ。

 全ての存在には起源がある。ではある特定の起源を持つ存在は常にひとつだろうか?
 違いますよね。大概複数存在している筈。
 一番最上位、つまり起源から見てもその下に発生したモノは複数存在している。
 ならばそれより下のある地点。例えばロアという存在から見てもそこより下に発生したモノが複数存在していても不思議はない。
 つまり、ロアの転生体候補は初代ロアが一から魔術的に干渉して人工的に生み出されたのではなくて、ロアという最初の存在を起点として流転し、発生した存在である…要するに、元々は自然に発生したロアの生まれ変わり達であり、同時代に複数存在する場合もあったという考えであります。

 これならシエル先輩の魂の名前がロアであるとか、四季が遠野とも違うモノであったとか、そして両者が同時代に存在していたとかいう事柄に関しても一応説明がつくんじゃないでしょうか?
 つまり、元からロアとその転生体は赤の他人同士というわけではなかったと言う考えなわけですな。といっても血が繋がってるんじゃなくて。存在の糸が繋がっているというべきでしょうかね。

 また、一度の転生に数十年程度のブランクが存在する点に関する疑問にも説明がつく。
 魔術師の中には前世の人格を呼び起こしたりする者もいると橙子さんが言ってましたが、これは魔術師とその前世という二つの存在が繋がっているから可能なのであって、元々繋がりのない人間の人格を呼び起こす事はできないと思われる。
 という事は逆に自分との存在の繋がりが一切ないモノへは転生できないという可能性が高い。というかそれは転生というより憑依?
 ロアがもし誰にでも転生可能であったならば、例え異能力を伝え、権力を持った家系の子供であるという条件を満たしている必要がある事を考慮に入れてももう少し短いサイクルで転生できていた筈だろう。
 しかし実際には異能力・権力だけでなく、存在の繋がりという条件をも満たす必要があるから数十年単位の時間が必要になるんじゃないだろうか。

 なお、転生体の発生はあくまで自然法則に則ったものであるわけだから、第三者も魔術的なカラクリも存在していない。故に結局転生体本人を見つけ出して魂を破壊する以外に転生を止める方法はないという事になるわけですな。


 その93 四季の事を「違う」と感じた理由

 よく考えてみたら単にロアの生まれ変わりであるというだけで秋葉が「違う」と感じるのは無理がありますね。
 大抵の人間は何かの生まれ変わりである筈ですし、ロアの生まれ変わりだけが特別ってのもちょっと変です。

 もしかしたら初代ロアは転生するにあたって自分の生まれ変わりにだけ何らかの細工を施したりしたのかも。例えば魂の情報を移植しやすいようにするとか。
 しかしそれだったら再び魔術的カラクリとか協力者とかの問題が持ちあがるじゃないかと思われるかもしれませんが、これはロアとは無関係の存在に干渉するのとは違いますから。
 ロアという存在の生まれ変わりだけをどうにかしたいわけだ。で、その生まれ変わり達は元々はロアという存在だったわけだ。
 ならば初代ロアが転生前に自身に対して何らかの魔術を施してやれば、転生後もその魔術が転生体候補達に影響を与え続ける、という事もありえないではないと思う。


 その94 魂が拡散しない理由を考えてみる

 朱い月が、人間の魂は外気に耐えられないものであり、例え死徒へと変貌しようと劣化はさけられない云々って言ってましたが、逆に言うなら多少劣化しようと死徒になれば魂が拡散し難くなるという事なんじゃないでしょうか。
 ロアは自身の研究が人の身では限界にぶちあたっちゃったから仕方なく死徒になったらしい。
 その限界というのは人間の魂では転生する際に拡散してしまうという事であって、これを解決する為に死徒へと変貌する必要があったのかもしれない。

 一方荒耶も肉体が滅びた状態のまま意識だけで生き延びる事が可能なわけだが、これに関しても上で述べたようになんらかの手段で魂が拡散しないようにしているのかも。
 ひょっとしたら静止という起源に覚醒している為だろうか?
 そもそもこの状態だと非常に死に難いようだし。起源覚醒は魂から肉体への干渉だから、これによって肉体が死に難くなったのならば、そのように肉体を変貌させた魂自体も拡散しづらくなっているという事がありえないではないと思う。


 その95 転生体の人格・会話ができる"両儀式"

 魂が拡散し難くなるとはいえ、先に述べた通り死徒になったとしても情報の劣化は避けられない。ロアはそれを考慮にいれて必要最低限の情報のみ転生先へ移植できるよう「自己」というものを省略したのかもしれない。

 結果ロアは転生体の知性が充分に育つまでは覚醒できないし、知性が育っても四季のケースのように人格が崩壊してしまうなどといった状況下においては表に現われる事ができなくなってしまったんじゃないかと思う。
 なんでもシエル先輩がロアとして活動してた頃の回想によると、転生体としての意思は「〜をこうしたい」というものだけであり、それを実行するのはあくまでシエル先輩の肉体と共に形成された精神であったそうですし。

 そういえばこれ、空の境界のラストで両儀式の肉体が会話を可能としていた理屈となんだか似ている。
 肉体だけでは知性がないので会話などできない。それを可能とするのは肉体と共に形成された、「式」という知性をもった人格が存在しているから。
 恐らく、「式」という人格の主導権が無く、だがその機能だけを肉体が操っているという状態だったんだろう。

 ロアの魂は両儀式の肉体と同じ事をやってたんじゃないだろうか。
 初代ロアが省略した「自己」とは、彼の肉体と共に形成された人格であり、両儀式の例においての「式」にあたるもので、これは既に失われている。
 だから、ロアはそのままだと何もできない。故に転生先の肉体と共に形成された精神に自分の意思を代行させていたのだと思われる。

 つまり、行動の決定権はロアの魂が握っているが、基本的に人格自体は転生体のものである。
 そういえばシエル先輩も転生体によってロアの人格は変化するとか言ってましたが、それにはこのような理由があったからなんでしょう。


 その96 魂に記録されている情報の劣化

 既に上で述べてきたように人の魂は劣化しやすい。
 レンの魂は元々はとある人間の少女の物であった。が、その頃の記憶がどうも曖昧であるかのように見えるのも魂の情報が劣化してしまったためかもしれない。
 ただこの現象の進行は思っていたほど早くはないようですね。俯瞰風景での幽霊の例も裏付けになるかな? 幽霊と魂とではちょっと違ってくるかもしれませんが。
 即座に壊れていくようであれば生みの親であった魔術師がレンの元となった少女の死に立ち会っているくらいでないと間に合わない。

 なお、新たに使い魔として生まれ変わったわけだから、転生の場合と同じで前世の記憶が薄れている、というのはないんじゃないかと思う。
 その場合、完全に前世の記憶が白紙に戻っている筈だろう。前世の事は全く憶えていないのが通常だし。

 ひょっとしたら大抵の人間が前世の記憶を失っているのは次の存在へと生まれ変わるまでの間に情報が劣化しきってしまうためだったり? あんまり自信はありませんが。


 その97 転生体への魔術の継承

 鮮花も述べている通り魔術というのは自身の身に刻むものであるらしい。
 これが自身の肉体に刻む、という意味だったらロアの転生体は覚醒したらその都度新しい肉体に魔術を刻み直していたんだろうか?
 そういえばシエル先輩はロアの魔術を受け継いだというよりはその知識を受け継いでいたという書かれ方をされていた気がしたが…。といってもその言い回しに深い意味はないのかもしれませんが。

 或いは魂に刻まれてさえいればデフォルトで魔術を行使できる、というのはどうか?
 橙子さんや荒耶の例は…予備の人形(肉体)は作った段階で既に魔術を刻んでいた可能性があるのでこれの裏付けにはならないか…。
 前世の人格を呼び出してその能力を行使する魔術師の例も…前世の記憶さえあれば魔術を刻み直せそうなので…裏付けにはならないか。

 とりあえず肉体に刻むもので、魂に知識が刻まれてるだけじゃだめ、という可能性の方が高そうかな?

 ちなみに魔術を肉体へ刻み直すのにかかる時間ですが、鮮花はひとつきやふたつきで魔術は身につかないといっていたけどこれは一から学んだ場合の話なので、知識だけは全て受け継いでいる転生体ならそんなに時間はかからないかも?

 ところで今代のロアが本編中魔術を行使してなかったのって、肉体に魔術を刻む暇がなかったからだったりして。
 つまり、使わなかったのではなくて使えなかった。
 志貴の行動によってロアとして登場したり四季として登場したりするわけだから、少なくとも本編開始直後くらいまでは四季として壊れたままであった筈ですからね。


 その98 ロアは格闘は素人?

 シエル先輩の魔術の知識はロアから受け継いだもの。
 対して格闘技術は教会で鍛えて得たもの。
 前者は受け継いだモノだが後者はそうではない。
 魔術的知識だけ受け継いで格闘技術は受け継いでいないというのは不自然。
 つまり先輩がロアから受け継いだ物の中には、はじめから格闘技術は存在してなかったんじゃないだろうか。
 よってもしかしたら初代ロアは格闘に関しては素人だったのかもしれない。はじめから無いモノが伝えられる事などないという事で。

 格闘技とかは体で憶える物だからロアの魂には記録されていなかっただけなのではという反論がありそうだけど、そうはいっても実際には脳みそが体の操り方を記憶しているわけで、知識と一緒に受け継がれたとしてもおかしくはないと思う。
 もっともその場合も体格・体質・運動神経といったものの違いからくる誤差などがあると思うので、転生後に技術を完全にモノにするためには相応の練習が必要になりそうですが。
 それにしたって誤差修正程度なら一から学ぶのと比べればそれにかかる時間はたいしたもんじゃないだろうし。

 まあ、彼の専門は魔術でしょうからね。格闘は素人だったとしても不思議はないんじゃないかと。
 格闘に長けた魔術師としては荒耶がいますが、彼の場合は200年生きてきたわけだし魔術以外の何かを身につけるだけの時間的余裕もあった。
 対してロアはロアとして活動している時間だけでいうなら意外と短そうだし。
 というか荒耶の方はそもそも動乱の時代を生き抜いた男なんで、魔術よりも格闘技術を身につけたのが先かな?

 さて今代のロアですが、シエル先輩は強いと評価していたもののどうも一般にはそう考えている人は少ない気がします。
 特に身体能力などは志貴やシエル先輩と同程度と考えている人が多いんじゃないだろうか? まあ、統計とったわけじゃないんですが。
 しかし彼が格闘は素人だったのだとしたら、その上で志貴と渡り合っていた事から技術で大きく劣っていたぶん身体能力で志貴を大幅に上回ってた事になると思います。
 例えばこれって格闘技の有段者に素人が運動能力だけで互角に渡り合っちゃうようなもんなので相当にすごい事だと思うんだけどなあ。
 ネロ戦みたくピンチが長く続かなかったから誤解されてるんだろうかなあ。


 その99 神代の御業

 はい。あなたの中のソレを、少しばかりカタチにできる神秘を教授いたしましょう。その神代の御業をもって、あなたに捕らえてほしいひとがいるのです、混沌よ」
 (月姫・ロア)


 最初にこのセリフを読んだ時は「神代の御業」という個所はさらっと流してましたが、空の境界を読んだ後に改めて見なおしてみるとかなり興味深いですね。
 つまり本編でアルクェイドを捕らえたネロの"創生の土"は、神代と呼ばれる現代よりもより高度な魔術が普通に存在していた時代の魔術による物であり、現代の魔術とは一線を隔したシロモノだったという事なのだろう。
 アルクェイドがビックリするのも無理ないですね。格で言うなら皐月の言葉には及ばずとも、下手をするとかなり近いレベルではあるかもしれない。

 なおこのセリフからでは神代の御業とは

 1:ネロが元から内包していた混沌その物
 2:ロアが教授したネロの混沌を多少制御できるようにする秘術
 3:1と2を合わせた結果である"創生の土"


 これらのうちどれを指しているのかちょっとわかりませんが…。
 "御業"という丁寧な言いまわしからして2ではなく1を指していたとも考えられるかもしれない。
 しかし、最初にその術を作り出した神代の魔術師に対して敬意を表していたからこういう言いまわしを用いていたという可能性も考えられる。
 もうひとつ。ネロの創生の土に対してアルクェイドが驚愕し、それを誰から教わったのかと聞いていた事。
 そして創生の土はロアから教わった秘術のみでは形成できない。ネロの混沌という素材があってこそ。

 これらの事から判断するに、結局どれと断言はできないけど可能性の高い順に並べれば3>2>1と言ったところだろうか。


 その100 書に例えられた魔術師達

 皐月とロアはどちらも本編でその在り様を書に例えられている。
 それはふたりとも自己という物が存在しないからなのだろうけれども、しかし何故に書なのか、もうちょっとつっこんで考えてみる。

 皐月に関しては自身の記憶が自身のものとして認識できなくなり、自己が成立しなくなってしまった。
 そして周囲に対して決まった反応をするだけの存在となっている。
 これでは読み手に決まった知識を与えるだけの書物となんら変わりはないだろう。

 ロアはその95で述べたように転生体自身には意思と言う物がある。
 よって転生体達はそれなりに人間的なリアクションを返す事が可能だろう。
 けれどそれはあくまで転生体のものであって最初のロアの意思という物は既に失われている。
 シエルグッドエンド前に、書を読む観測者というふうに例えられていたと思う。書、つまり本がロアの魂であり、そこに記されている内容を受けとって、自身の意思で行動するのが転生体、という関係なんでしょう。

 逆にロア自身の方を観測者とする考えもあるかもしれませんが、シエルトゥルーエンド前でロアと融合しかかってた志貴が、「同じ過去と目的を共有する『子孫』を作り出す」というふうに例えていた事と、「……ロアはすでに居ないのと同じなんだ。あいつはもう、過去を引きずって同じことを繰り返すだけの存在だ」と述べていた事。これらと合わせて自分はとりあえず上のように解釈しました。
 この辺は皐月も同じですね。永遠という事に固執するだけで、結局延々と同じ事を繰り返しているだけ。
 ふたりとも自分の意思というものがあれば、そこから抜け出す事も出来たかもしれないのに。

 ちなみに荒耶もその実態は彼等と似たようなモノであるかのように見える。
 でも書物には例えられていなかった。
 これは荒耶には意思という方向性が一応存在しているためだろうか。ただその方向性が変わらなくなってしまっただけ。
 「無い」から変わらないのと、「有る」けど変わらないという違いですかね。実質大差ない気もしますが。

 結論。人としての知識・経験などを持ち合わせていても、自己の意思と言う方向性が存在しなければその知識・経験も書物に記された文章となんら変わりないと、多分そういうわけなんでしょう。
 書物に書かれた文章は書物自身の手で書き加えられる事などないですからね。


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