ロアの転生に関する考察

 この文章は過去にらっきょとーくで書いた内容を元に再構成したものです。


 ロアの転生のメカニズムに関しては色々と疑問点がある。特に気になるのがシエル先輩と四季が同時に存在していた事だろう。何故転生体が同時代に複数存在したのか。

 単に四季は特殊な例であって元々転生体として誕生したわけではなく、シエルルートで四季から志貴へとロアが乗り移ったのと同じ要領でシエル先輩の死後に四季へと乗り移ったのだろうとも考えた。
 しかし秋葉が幼い頃に四季を遠野ともまた違った存在であると感じていたので、やはり彼もはじめからロアの転生体として生まれてきたのだと考えた方が良いだろう。

 この矛盾を解消できるものとして思いついたのが、ロアの転生は朱い月のそれに似て、魂に自身を受け入れる部分を持った人間が一定の確率で誕生するような方式なのではないかという仮説。
 これならば転生体候補が同時に複数存在してもおかしくはない。その中から自分の選んだ家系に生まれている者を選んでいたのだろう。

 しかし少なくともシエル先輩が誕生するまでにはおよそ100年の空白がある。つまり必ずしもある代のロアの存命中に次代のロアが存在しているというわけではない。
 となると恐らく転生体候補は自動的に発生しているという事になるのだが、どうやってそれを可能とするのかという疑問がでてくる。しかもこの自動発生は簡単に阻止できるような仕掛けでは話にならない。
 
 この問題をクリアできるのが空の境界で出てきた起源の話だろう。

 ある起源から発生した存在は大概複数ある筈。ならばそれより下のある地点……例えばロアという存在より下に発生したモノもまた複数存在していても不思議はない。
 つまり、ロアの転生体候補は初代ロアが一から魔術的に干渉して人工的に生み出されたのではなく、ロアという最初の存在を起点として流転し、発生した存在。要するに、元々は自然に発生したロアの生まれ変わり達であり、同時代に複数存在しても不思議はないという考えである。
 基本的に自然法則にそった転生であるから、ロアを発見してその魂を滅ぼす以外に転生を阻止する方法はないだろう。
 また、初代ロアが起点たる自身に対して何らかの魔術を施してやることによって、そこから流転して発生した転生体候補達が魂に自身を受け入れる部分を持って誕生してくるようにするのも不可能ではないだろう。

 これならシエル先輩の魂の名前がロアである、四季が遠野とも違うモノである、そして両者が同時代に存在しているといった事柄に関しても説明がつくのではないだろうか。
 つまり、元からロアとその転生体達は赤の他人同士というわけではないという事になる。かといって血が繋がっているというわけでもなく、言うなれば存在の糸が繋がっているといったところだろうか。

 また、一度の転生に数十年程度のブランクが存在する点についても説明がつく。
 魔術師の中には前世の人格を呼び起こしたりする者もいると橙子さんが言っていたが、これは魔術師とその前世という二つの存在が繋がっているから可能なのであり、元々繋がりのない人間の人格を呼び起こす事はできないと思われる。
 だとするならば自分との存在の繋がりが一切ないモノへは転生できないという可能性が高い。ロアがもし誰にでも転生可能であったならば、例え異能力を伝え、権力を持った家系の子供であるという条件を満たしている必要がある事を考慮に入れても、もう少し短いサイクルで転生できていた筈だろう。
 しかし実際にはこれらに加えて存在の繋がりという条件をも満たす必要がある為、数十年単位の時間が必要になるのではないだろうか。

 なお朱い月が、人間の魂は外気に耐えられないものであり、例え死徒へと変貌しようと劣化はさけられないと言っていたが、逆に言うならこれは多少劣化するとはいえ死徒になれば魂が拡散し難くなるという事ではないだろうか。
 ロアは自身の研究が人の身では限界に直面し、仕方なく死徒になったらしい。その限界というのは人間の魂では転生する際に拡散してしまうという事であって、これを解決する為に死徒へと変貌する必要があったという可能性も考えられるかもしれない。


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