志貴は何故
さつきの支配から
逃れられたか


 夜の公園で志貴がさつきに血を体内へ送りこまれてしまうシーンがある。この後直死の魔眼の能力によって血を殺して彼女の支配から逃れる場合と精神力(?)によってなんとかこらえる場合がある。では何故志貴は後者の場合において吸血鬼化せずにすんだのだろうか?

 仮説1:七夜の人間には人外の能力に対する耐性がある

 退魔を生業としていた一族ならばそのような体質を遺伝的に受け継いでいても不思議は無いかもしれない。しかし本編中において彼らがそのような体質の持ち主であるかのような描写がない。

 仮説1では合っているとも違っているとも断言しきれないので他に何かないか考えてみた。そこでふと気になったのが問題のシーンにおけるさつきの「わたしより前に誰かの支配を受けてたの……!?」というセリフである。
 このセリフから、誰かに血を送ってもその対象となる人間が既に別の吸血鬼の支配を受けていた場合は無効化される可能性がある事がわかる。
 とはいえ志貴は人間である筈。ならば肉体は人間のままでありながら吸血鬼に支配を受けているのと同様の状態であるというのならばどうだろう? そこで考え付いたのが仮説2である。

 仮説2:四季と命を共融していたため


 志貴と命を共融している四季は同時に吸血鬼のロアでもある、ともいえるかもしれない。そして四季は共融の能力によって志貴の命を利用して生きている。これはつまり四季が志貴の命を強引に自分と(共融の能力の本質は奪う事ではないと思われるので)共用させているわけであり、四季が志貴を支配しているのに近いと言えなくもないのではないか? よってさつきの血の支配に抵抗できたものと考える。
 また、四季は志貴の命なくしては生きていけない。そして志貴がさつきの支配を受けてしまうと今まで通り命を共融できなくなる恐れがあるかもしれない。つまり命を共融しているがため志貴の体は四季の体の延長でもあり、さつきの血への抵抗は四季の自己防衛だったという風にも考えられるかもしれない。

 とまあ、仮説1よりは説得力のあるものがなんとかできたもののどうにも決定力に欠けるような気もする。とりあえず現時点で考え付くのはこの程度。

 なお、さつきに噛まれた事によって至るBADエンドだが、この場合はそれまでの選択肢の影響によってうまく抵抗力が働かなかったという事なのだろう。


【02/1/11 加筆】

 この文章は私がTYPE-MOONさんのネタバレ掲示板に投稿した記事を元に再構成したものです。

 仮説3:秋葉との結びつきの強さのおかげ

 以前TYPE-MOONさんのネタバレ掲示板にてきのこさんが、第2回人気投票画面に掲載されていた秋葉の必殺技「式神行使」について説明されていた。
 それによるとこれは、死んでしまった動物に自身の一部を分け与える事によって再び生命として起動させるというものであるらしい。
 ここできのこさんは明言されてはいなかったが、上記の事から察するに秋葉が過去に共融の能力をもって志貴を蘇生させたというのは、実は厳密に言うと志貴を自身の式神とした、という事だったのだろう。

 この事を考慮に入れて改めて考えてみると、志貴は秋葉の式神的立場にあり、いわば秋葉の支配を受けているも同然であったからこそさつきの支配を跳ね除ける事ができた可能性が高いと言えるのではないだろうか。
 よって、先にも述べたさつきの「わたしより前に誰かの支配を受けてたの……!?」というセリフはこの仮説の裏づけにもなる。


 【結論】

 仮説1〜3のうちどれが最も有力であるか。
 1〜3の全てが、という可能性も捨てがたいかもしれない。が、私は仮説3のみが要因となったか、或いは仮説1・2も要因となっていたとしても決定打となったのはあくまで仮説3であったのではないかと考えている。
 根拠としては、志貴が体内に入ったさつきの血を殺して難を逃れたパターンと違い、ここで論じている血を殺さずとも支配から逃れられたというパターンは秋葉ルートを目指して進んでいた場合のものであるという事。
 つまり、秋葉ルートを目指して進んだ事によって秋葉との結びつきがより強くなっていた為に、秋葉の支配力がさつきの支配力に勝ったのではないかというわけだ。
 血を殺さないパターンが秋葉への好感度が最も高い場合にのみ出現するのであるから、仮説3のみが原因となっている可能性が高いと考えた方が良いと思う。


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