何故七夜は
魔術・法術を学ばないのか

 ひとつは器用貧乏にならないようにする為、というのが考えられるかもしれない。黄理を見る限り、いかに殺すか、そればかりを探求した結果鬼神と呼ばれるまでの達人へと成長したように思える。
 そもそも生命としての性能が劣っているのだから、トータルバランスを高めるよりは何かひとつ突出した切り札となるものを用意し、それが有利に働くよう事を運ぶ、という手段をとった方が確実だろう。それが暗殺術というカタチになったのではないだろうか。

 或いは退魔師の法術に関しても同じ思想の下に誕生したのかもしれない。これは生粋の魔を縛するのに特化した術であって、それ以外の使い方には向いてないからである。
 だからこそ、七夜はこれを学ぼうとしなかったのかもしれない。彼等は混血専門だったと思われるからである。

 ならば魔術はというと、陰陽道以外の魔術系統は日本では非常に少なかったのではないだろうか。蒼崎家のような例は少数派だったと思われる。
 魔術協会の手の者が来日するのに何日もかかるとアルバが言っている。これはつまり協会の支部が日本に存在していないという事だろう。日本で行動する許可を得る為の話し合いに何日もかかるというのに支部が日本に存在しているなど矛盾している。
 思えば空の境界でも、蒼崎家で魔術を学んだ橙子さんを除けば日本で陰陽道をはじめ、日本特有のモノ以外の魔術を学んだ魔術師は見当たらない。
 鮮花や黄路美沙夜は協会で学んだ魔術師から学んだので例外。荒耶もその術は台密の流れに属する物のようにも見えるが、それ以外は協会で学んだのだろう。

 結論として、法術は生粋の魔を縛する目的以外にはあまり使えず、混血にも通用する可能性のある別の魔術に関しては日本ではあまり見られなかったと思われる事から、前者は学ぶ意味が無く、後者は学びたくても学べない環境であったため、そして器用貧乏になるのを避ける為に七夜はこれらを学ぼうとしなかったのではないかと思われる。


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