秋葉の能力に関する考察

 この文章は私がTYPE-MOONさんのネタバレ掲示板に投稿した記事を元に再構成したものです。
 書いたのは歌月十夜以前です。
 誤字・脱字・文法のおかしな個所などの修正をしてありますが、内容は変わっていません。



 とりあえず思いついた仮説を片っ端から挙げて検証してみる。現時点では仮説4が本命。


 仮説1 魔眼の一種

 一番最初に思いついた仮説である。視線を送った部分を略奪するわけだから最も有力な仮説であるようにも思える。
 が、本編における描写を見る限り彼女の眼はあくまで力を方向付けているだけで、いわば操舵のような役割を果たしていると思われる。となると眼そのものが何らかの魔術的な力を有しているのではないだろう。
 それを裏付けているのが彼女が能力を発動する際の、赤い髪が伸びて視線を送った部分に絡み付くという描写である。もしも秋葉の眼がなんらかの力を発していたのならば、志貴の視界には元からある髪が伸びるのではなく、眼から新たに髪が生えて伸びてくるかのように映ったのではないだろうか?
 想像するとコワイ絵になってしまうが…。
 とりあえずこういった理由からこの仮説は違っている気がするのだが、かといって決定的に間違っているとする根拠も今のところ見当たらないので保留。


 仮説2 空想具現化

 二番目に思いついた仮説。根拠は以下の通り。

 1: 「げっちゃ」においてアルクェイドが秋葉のルーツは自分と同じであると言っている
 2:槙久が手記の中で秋葉にはより旧い起源を感じると述べている
 3:本編中において髪の毛が「具現化」されるという描写がある


 1から秋葉(遠野)の先祖はアルクェイドと同じく超越種であると思われる。そうであるならば秋葉が空想具現化を可能としても不思議はないかもしれない。
 2から彼女の能力は遠野の起源たる超越種に縁のあるものであると考えられる。ならば空想具現化であるとするこの仮説の説得力が増してくる。
 3から彼女の能力は具体的には普通の人間には見えない髪の毛を具現化し、それを視線でコントロールしている、という事になる。が、よくよく考えてみると実体はあるが見えないモノを「具現化する」という言葉の使い方があっているのかイマイチ自信がない。「具現化」という言葉の正確な意味を知らないのだが実体さえあれば目に見える見えないはあまり関係ないかもしれない。

 などと思っていたのだが…。

 後になって、3で述べた目に見えない髪は志貴が触れようとしても触れられなかったことから実体すらないであろう事に気が付いた。つまり具現化でないことがハッキリしてしまったので具現化の意味云々の話などもはや関係なし。
 よってこの仮説はボツ。


 仮説3 固有結界

 三番目に思いついた仮説。二番目の空想具現化説とほぼ同時に思いついたのだが固有結界は維持できても数分程度である事、そして術者の意思でその形を変えられないという欠点があるため秋葉の見えない赤い髪が自在に動き回っていた点と矛盾するという事から無視していた。

 が、転じて一時期は自分の中では本命、現在は仮説4に対するいわば"対抗"的位置付けとなっている。その理由は以下のとおり。

 1:自然の延長たる存在ならば長時間結界を維持できるらしい
 2:見えない髪そのものが結界ではなく、結界が作り出したモノと捉えれば矛盾は解消する
 3:志貴が「異界だ」と表現している


 1から、最初この仮説を無視していた原因である「維持できても数分程度」という問題も解決される。つまり超越種を先祖に持つ秋葉ならば長時間結界を維持できても不思議はないという事である。同時に槙久の手記も伏線として活きてくる。
 2はそのままの意味である。秋葉の見えない髪自体が結界であるとすると秋葉の意思で形が変貌していく点から矛盾する。が、この髪が結界そのものではなく、「結界内においてのみ存在しうるモノ」であるのならばそれがいくら形を変えようと問題ないだろう。
 3は琥珀ルートラストで志貴が学校に入る前での事。固有結界とは月姫用語辞典の中でも書かれている通り「異界」である。術者の心象世界を現実に侵食させたものであるという事や、術者が自然の延長たる精霊以外である場合は世界が潰しにかかる事からもその事がうかがえる。
 よってこの場面で志貴が学校を「異界だ」と感じたのはそこに固有結界が展開されていた為だという可能性も充分ありえるだろう。

 よってこの仮説が正しいとするならば秋葉の能力とは

 ■祖先が超越種である事から長時間の維持が可能
 ■結界内においては視線を送った対象から熱を略奪する事が可能
 ■結界内においては視線を送った対象を拘束する事が可能(琥珀ルートラストでやっていたように)
 ■視線の届かない場所にも「力」を流す事によってそれに接触した対象からの熱の略奪が可能


 という機能を持った固有結界であるという事になる。

 【問題点】

 ただし、この仮説にはひとつ問題点がある。それは秋葉の能力が遠野の血によるものである事。つまり、遺伝によって受け継いだ先天的なものだと言う事である。
 固有結界とは術者の心象風景を実体化させたものである。つまりその特徴が後天的に決まると言える。この点において矛盾してしまうのだ。
 …となると固有結界を作り出す能力そのものが遠野の血によって受け継いだものであり、「略奪」という特徴は秋葉の心象世界によるものであると考えるべきだろうか。
 あくまで後天的に決まるのはその固有結界の特徴のみである。固有結界は一部の限られた者達にしか作り出す事が出来ない。つまり誰でも方法さえ教われば作り出せるというシロモノではないらしい。ならばそのための資質というものがあり、それを遺伝によって受け継ぐ事があってもおかしくないかもしれない。


 仮説4 外界への干渉能力

 とりあえず現時点での本命とも言える仮説。仮説3は筋が通っているとはいえ、既に述べたとおり秋葉の能力は先天的なものであるという点に対する矛盾を抱えている。これに関して一応のつじつま合わせはできたものの、やはり少し苦しい。
 この問題を解決できるのがこの仮説4。今まではこの仮説はほとんど想像によるものだったので本命たりえなかったが、先日月姫の秋葉ルートを再プレイした際に終盤の戦闘において四季がこれを裏付ける説明をしていたのを確認したので本命へと格上げした。

 「外界への干渉能力」とは遠野の固有能力のひとつである。正式名称はわからないのでとりあえず四季の言葉を借りている。もしかしたら四季自身正式名称を知らなかったため、とりあえずこのように呼称していたという可能性もあるかもしれないが。
 秋葉の能力が先天的なものであるという条件も当たり前だがこれによって満たされる。ていうかそもそもこの仮説は彼女の能力が遠野の固有能力であるというところから来てたんだが…。
 ちなみに四季いわく、遠野の人間の能力は様々だがその中でも干渉するタイプの能力者は少ないとの事。この事が既に述べたアルクェイドが「秋葉のルーツは自分と同じ」と言っていた事や、槙久が手記において「秋葉は極めて旧い起源を感じる」と述べていた事を多少裏付けているかもしれない。旧い起源をもつ能力の方がレアであると思われるからだ。

 本編中に登場した数々の能力の中では超能力に性質が近いかもしれない。アルクェイドの超能力者に関する説明の中で「超越種でもないのに超常現象を起こせる」といった内容の物があったと思う。これは裏を返せば超越種の能力の中には超能力に似たようなものも存在するという事ではないだろうか。しかし能力によって引き起こされる現象の見た目だけが似ていてその原理は全く違う可能性もあるのだが。

 具体的にどういった能力か、だが…

 ■視線を送った対象から熱を略奪
 ■視線を送った対象を拘束
 ■視線の届かないところにも「力」を流す事によって接触した対象から熱を略奪

 といった事を可能とするもので、視線はあくまで能力をコントロールするためのものと思われる。
 なお、射程距離及び能力発動までのスピードが視界の状態に左右される事から、目から送られた視覚情報のうち能力を行使する対象を脳が認識して初めて能力が発動するものと思われる。これらに関しては仮説3においても同様。

 見えない赤い髪だが、これが熱を略奪する機能を持っているのは確かである、だが、秋葉が「そういうもの」欲して作り出しているというわけではなさそうだ。彼女自身はこの髪を知覚していなかったからである。
 恐らくその実態は対象から熱を略奪、或いは拘束しようと秋葉が能力を発動した結果発生する力の流れのようなものではないだろうか。或いは力を発動する際に赤い髪のイメージを頭の中で思い描いているため、実際発生した力の流れもそのような形を取っているのかもしれない。
 なんにせよ、実体を持つ存在ではないが故に秋葉自身には視えず、志貴の目には視えたのだろう。この事もまた仮説3においても同様。

 なお、志貴が「異界だ」と感じた事についてだが、彼が校舎全体を覆う秋葉の力をその目で視たためか、或いはその力によって校舎全体の在り様が通常とはあまりにもかけ離れたものにされていたという事を感じ取ったため、という事で説明がつくだろう。

 また、白本の用語辞典では軋間の灼熱の能力を自然干渉と呼称していたが、これは名前からして恐らく空想具現化同様、自然から独立した存在である人間に直接干渉することは出来ないだろう。よって人間から直接熱を奪う事ができた秋葉の能力は同じ外界への干渉能力とはいえ自然干渉とは別物であると思われる。


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