千年城ブリュンスタッドとは

 ブリュンスタッド城は(現在は)アルクェイドの空想具現化の産物である。しかし月姫用語辞典にはこれが固有結界であると記載されている部分もある。一体どういうことなのだろうか?

 城そのものが空想具現化による産物であるのは明らかにされているが、固有結界の方も同様に城を丸ごと形成できるのかどうかはわからない。が、ハッキリといえるのはアルクェイドを封じていた千の鎖、これが固有結界によって形成されたものである可能性が高いということだろう。
 固有結界は術者の心象世界を形にするものであるから、アルクェイドはロアの姦計にはまって真祖達を皆殺しにしてしまった事への自責の念から鎖に繋がれ戒められる自分自身をイメージしたのかもしれない。

 私が思うに「千年城ブリュンスタッド」とはアルクェイドが具現化した城の名前でもあり、同時に彼女の固有結界の名前でもあるのではないだろうか?
 空想具現化はその形に術者の意思を反映させられることから実質無限に近いバリエーションが存在するといえる。対して固有結界とは術者のただひとつの心象世界を反映したものである。おそらく術者ひとりにつき作り出せる固有結界は1種類のみと考えて良いだろう。ならばそれに名前がつけられていたとしてもおかしくないのではないだろうか?
 ひょっとしたら本来彼女の城の名前は「ブリュンスタッド城」、固有結界の名前が「千年城ブリュンスタッド」で、彼女が城内で固有結界によって鎖を作り出し自らを封じるようになってからはいつしか周囲では城の名前と固有結界の名前が混同されるようになってしまったのでは、などと思ったが想像の域を出ない。
 また、「千年城」という名前と「千の鎖」、両者に「千」という共通点があるところも興味深い。鎖一本あたり一年間アルクェイドを拘束する力があり、それが千本あるから……という事だろうか?

 ところでなぜ鎖の方を空想具現化ではなく固有結界によって形成したのだろうか。どちらの手段でも鎖を形成することができるのならば固有結界の方を選んだのは何故なのか考えてみた。

 理由1:アルクェイドが自身にも解けない鎖を欲したから

 アルクェイドの道徳観念なりは志貴ら人間とはいくらか異なっているが、少なくとも真祖達を殺してしまった事を彼女は「悪い事」と認識し、悔いていると思われる。だからこそ自身を縛る鎖が簡単に解けてしまうのをよしとしないだろう。
 真祖達を殺してしまった事を悔いているのはそうなった原因たるロアを憎んでいる事からもわかる。単純に自分を騙したのが許せないというだけならばあそこまで憎んで追い回したりはしないだろう。


 理由2:固有結界の鎖ならば術者にも解けないから

 空想具現化は術者の思い描いた通りに自然を変貌させるものであるから、これで鎖を作ったとしても術者の意思で簡単に解けてしまうだろう。
 対して固有結界の場合は術者にも解けない鎖を形成することが可能なのではないかと思われる。
 これは固有結界の「術者の意思によって形を変貌させることができない」という特徴を「その在り様を変えることができない」、つまり、「その機能を変えることができない」と解釈し、術者の心象風景次第で術者の意思にすら逆らう結界を形成することも可能なのではと考えたからである。
 つまりアルクェイドの固有結界とは特定の条件が発生しない限りアルクェイドを強固な鎖によって拘束し続けるものなのではないだろうか。


 【特定の条件とは】

 ロアの覚醒ではないだろうか。アルクェイドはロアが活動する度に覚醒している事からもそれがわかる。
 また、彼女はできることならは自分を永遠に鎖で縛り付けておきたいと思っているだろう。ならば特定の条件とは鎖を解いてまでやらねばならない事が発生した場合、と考えるのが道理だろう。

 以上の理由からアルクェイドは鎖を形成する手段として固有結界を選択したのではないだろうか。

 結論として、千年城ブリュンスタッドとは城の主な部分がアルクェイドの空想具現化によって、彼女を拘束する千の鎖が固有結界によって形成されたものなのではないかというのが私の考えである。


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