タタリとエルトナムの心象世界

 ワラキアの夜ことズェピアがタタリであるのは、タタリが発生する地域が一種の固有結界と化しているからであるらしい。そしてこの固有結界とは使い手の心象世界を現実へ侵食させるものである。
 では、その地域の噂を纏ってタタリとなすという固有結界を形成するズェピアの心象世界とは如何なるものであろうか。

 その手がかりは同じくエルトナムの人間であるシオンの心の在り様にあると思う。
 物語の中で明かされているように、彼女は自己という物が極めて透明に近い為に他人の自我と衝突する危険性が低く、故に容易く他人の心の中へと侵入する事を可能とするが故に霊子ハッカー足りうる。
 そして彼女の回想からもわかる通りそれは彼女だけの才能ではなく、エルトナムの血筋のなせる業でもあったらしい。ならば代々エルトナム家の人間はズェピアを含め、同様の特性の持ち主であった可能性が高いと思う。

 自己を透明として、頭脳には他人から得た情報のみが在る。そういった存在が特定の領域を固有結界と成した場合、そこに存在する他人が持つ情報に依存したタタリという現象を発生させるという特性を持つ物になるというのも道理なのではないだろうか。

 もう少し突っ込んで考えてみる。
 他人から得た情報を自己の脳に蓄積した場合、それぞれ情報元が異なっていようと情報同士を隔てる壁は存在しない。しかしタタリを起こす固有結界となると状況は変わってくる。そこに居る人間達はそれぞれが別々に脳を持つが故に情報には隔たりがある。
 だからこそ「噂」というカタチで複数の人間が同じ情報を共有してはじめてタタリとして発生する事が出来たのかもしれない。

 シナリオの展開によってはシオンがタタリの後継者となる事もある。だがこの時のシオンにタタリを起こす能力は本当にあったのかどうか。後継者となった直後ではわからないが、タタリという固有結界の特徴がズェピアというエルトナムの人間の特性に起因していたのであれば、シオンも将来的に同じ事が出来た可能性はあったのかもしれない。


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