城の真祖を滅ぼしたのは誰か

 アルクェイドはロアがやったと言っている。しかしロアの記憶によるとアルクェイドがやったらしい。これでは矛盾してしまう。実際に真祖を滅ぼしたのは一体どちらなのだろうか。

 恐らく正しいのはロアの記憶だろう。何故なら彼はアルクェイドに血を吸われた時点で死亡しているからである。きのこさんが座談会にて明言されているので間違いない。要するに彼にはアリバイがある。
 また、夢十夜の朱い月で見られるロアの記憶から考えても彼が城の真祖を滅ぼしたとは考えにくい。

 では、アルクェイドがこの事件の犯人をロアだとした理由は一体なんだったのだろうか。ヒントは前述の「朱い月」にあると思う。
 ここで志貴とロアが「過去の記憶からなる世界」の「住人が死に絶えた城」で顔を合わせたのは普段のアルクェイドではなく、彼女の朱い月としての側面であった。
 これはつまりアルクェイドの中で住人が死に絶えた城、その原因にまつわる記憶を担当しているのが朱い月としての側面である事を意味するのではないだろうか。
 だとすると、アルクェイドはロアの血を吸って暴走していた際の事を憶えていなかった為、正気に戻った後にあの場で城の真祖を滅ぼせる可能性があるとしたら死徒化したロア以外ありえないと推測したのかもしれない。
 ズェピアと対峙した際は暴走状態ではなかったので完全に切り替わってはいなかったと解釈できない事もない。

 上記の出来事をアルクェイドが憶えていなかった事の裏付けになりそうなのが歌月十夜本編、マンションでの「夢」に関する彼女との会話である。
 これによると、彼女は夢をみないが睡眠中に過去の記憶を思い出す事はあり、それはその名の通り記憶をそのまま再生しているようなものであって厳密に言うと夢ではなく過去に起こった事実。しかし彼女が見た夢らしき物は自身も知らない出来事であり、そこにいたのは知らない人物であり、一番見たくない未来であったという。
 このアルクェイドが言っていた夢らしき物とは、朱い月に切り替わっていた彼女自身(=知らない人物)が城の真祖達を滅ぼしている場面(=自身も知らない出来事)だったのではないだろうか。そんな状態の己は当然彼女にしてみれば「一番見たくない未来」と言えるだろう。
 ちなみに彼女はこの夢らしき物に志貴が出てこなかった事を不満に思っていたようだが、実際にこれが過去の記憶であったのだとすれば彼が登場しないのも当然である。

 また、

 アルクェイドの死徒になった彼は、他でもない彼女自身の力で、
 細々と生き残っていた真祖たちを皆殺しにして、じっとアルクェイドを待ったんだ。


 シエルルートでロアに侵食されつつあった志貴による上記のモノローグだが、これに関しては「彼女自身の力で」という個所を、彼女に自分の血を吸わせて暴走させ、城の真祖が滅びるよう仕向けたのだと解釈すれば辻褄が合う。


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