桜ルートで士郎達が柳洞寺を訪れた際に遭遇した惨劇。その真相は如何なるものであったのかを可能な限り推察してみる。
この場面における描写をそのまま受け止めると、キャスターが葛木先生と思われる人物(以下、そのまま「葛木先生」と表記)を刺したという事になってしまうが、実際にはやはり直前に召喚された真アサシンが葛木先生を殺害した犯人であったと考えるべきだろう。
何故なら凛ルートの様々な描写から判断するに、キャスターが葛木先生を殺害するなど考え難いから(プレイヤー視点であればそれがわかるが、物語の中におけるセイバーや士郎の視点からでは、見たままの状況が一番もっともらしかったのだという事になるのだろう)である。
加えてこの事件は桜ルートでのみ発生している。となると、原因もこのルートでのみ起きた出来事であると考えるべきだろう。
ならば直前に起きた黒い影との遭遇による門番である小次郎の敗北と、その小次郎を媒介に真アサシンが召喚された件が怪しく思えるというわけである。
では、具体的に士郎達が訪れるまでにどのような出来事があったのだろうか。それを推測する為に、まず現場の描写を改めて確認してみる。
> お堂の中心に、赤い華が咲いている。
> 倒れ伏した男がいる。
> 胸を貫かれたのか、男は床に倒れたまま、板張りの床を赤く赤く染めていた。
「胸に」致命傷を負った葛木先生。そして、
> そのサーヴァントは、奇怪な短刀を手にしたまま死体(マスター)を見下ろしている。
すぐ傍にはこのようにルールブレイカーを手にして呆然と立ち尽くすキャスター。
確かにルールブレイカーは「胸に」刺す事が多い。だが、最初に述べたようにキャスターに動機はないし、この場面の後の言動からも彼女が犯人だとは考えがたい。
となると心臓を破壊するが故に同じく胸に痕跡を残す、真アサシンによるザバーニーヤの使用が疑わしくなってくる。
ダークによる投擲の可能性も完全には捨て切れない。葛木先生がこういった攻撃にどの程度対応出来るのかが不明だからである。
しかし激しい戦闘の痕跡を示す描写がない点から、葛木先生はさしたる抵抗をする事も出来ず敗れたのではないかと私は思った。
ならば実在する武器による攻撃であったというよりは、魔術・宝具の類による攻撃であったと解釈した方が自然なのではないだろうか。少なくとも葛木先生の後者への感知能力は皆無である事が作中にて明らかにされている。
さて、以上の事から葛木先生の死がザバーニーヤによるものであったと仮定すると、キャスターがルールブレイカーを手にしていた理由がイマイチ判らなくなるかもしれない。しかしここでこのように仮定した事によって、同時に思いついた事がひとつある。
ザバーニーヤの呪いを無効化しようと試みたが間に合わなかったというのはどうだろうか?
以下、サイドマテリアルの用語辞典は「妄想心音」の項より引用。
> エーテル塊を用いて、鏡に映した殺害対象の反鏡存在から本物と影響しあう二重存在を作成する。
> 殺害対象と共鳴したその偽者を潰す事で、本物には指一本触れずに殺害対象を呪い殺す。
この「殺害対象の心臓」とそれと影響しあう「ニセモノの心臓」との関係が、いわゆる契約関係に似ていると思ったのがその理由である。
故にあらゆる魔術を破戒するというルールブレイカーならば、前述の両者の繋がりを断つ事すら可能なのではないかと考えたのである。
そもそもそうとでも考えない限り、キャスターがわざわざルールブレイカーを持ち出していた理由がわからない。
よって士郎達が到着する前に柳洞寺で起きた出来事の私なりの推測をまとめると以下のようになる。
まず召喚された真アサシンによる襲撃。葛木先生が応戦したのかどうかは不明だが、いずれにせよ最終的に真アサシンはザバーニーヤを使用。
それを目撃したキャスター。彼女ほど卓絶した魔術師であれば、ザバーニーヤの発動前からそれが如何なるものであるか、ある程度読み取れたという可能性もあるかもしれない。だが、それに気付いた時には一歩遅かった。
結果、ルールブレイカーを手にしたまま葛木先生の手前で立ち尽くす事になり、その状況だけを見た場合、まるでキャスターが葛木先生を刺し殺したかのようにも見えた、という事だったのではないだろうか。
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