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 はるうらら ひねもすのたりて のたりかな

 春はいい。暖かい。こう、気怠い感じに陽光を浴びつつうとうとと。
 陽を浴びるに任せ、気持ちが流れるに任せ、ただ素直に自然に。ホントは少しだけ肌寒かったりするのもなんか無視とかしてしまって。或いはそれこそが要であるかもしれないが。
 浅き眠りが夢に誘う。夢自体は浅いわけで、そこに論じる意味がないといえばそれまでだが、時として意味がないことに意味を見出そうとする行為は自嘲の材料として役立って、なんか美味。もとい甘美。そしてこれもまた意味のない行為。
 で。
 その日は、天気が良かった。
 大きな窓をつけた部屋で、採光と称して昼寝を満喫していた。
 つまりは、単に、うとうとと居眠りをしていたところから、始まるワケだ。


「ひいろ、ひいろ」
 ちょい、ちょい
 ……ん?
 なんだか呼ばれたような気がした。
「ひいろ、おきて」
 間違いなく呼ばれてるね。名指しで。夢うつつにそう思い、目を覚ました。
 ヒイロは体を起こして眠気を払うように少し頭を振ると、大きく伸びをし、それからきょろきょろと辺りを見回した。
 すぐに、それに気づく。
「ひいろ、こっち」
 なぜか半開きのドアの向こうに姿を隠し、妙に小声でちょいちょいと手招きするモノがあった。今、この家にはヒイロとルーシアのふたりしかいない。当然彼女である。
 新手の遊びでも思いついたのだろうか。
「どうしたの? ルーシア」
 ヒイロはそんなルーシアに呼びかけてみた。しかし、彼女の反応は変わらず、ちょいちょいと手招きするままだ。
「こっち、こっち」
 ちょい、ちょい、と誘われるままに立ち上がると、ヒイロはドアへと近づいた。すると、
 ぱたん
 急にドアが閉まり、
 たたたたたっ
 廊下を駆けていく足音が聞こえた。
「……?」
 なんだかよくわからないが、ヒイロはドアを開けて廊下をのぞき込んだ。
 みれば、つきあたりの角を曲がったところらしく、青い髪がふわりとなびき、すっと逃げるように消えていった。先には、二階への階段がある。そして、
 たんたんたんたん
 階段を駆け上る足音が聞こえてきた。なかなかに軽快なリズムだ。
 ……本気で、新手の遊びでも思いついたのだろうか?
 などとぼんやり考えつつも、ヒイロはゆっくりとその後を追った。早く追う理由はないし、向こうには逃げなくてはならない理由などない。
 ちょい、ちょい
 思った通り、二階へ上がると、そのまま展望台へと続く梯子をのぼった先、そこから腕だけ出して、ルーシアが手招きしていた。
 それを見てヒイロは少し思案すると、ゆっくりと梯子に手足をかけ、
 だだだだだだっ
 一気に駆け上った。唐突に現れて、ビックリさせようと思ったのだ。
 が。
「あれ?」
 勢いよく最後の一段を跳ね上げ、尚かつくるんと一回転して展望台の上に着地を決めると同時、ヒイロは頓狂な声を上げた。
 なぜか誰もいない。黙して佇む望遠鏡が妙に虚しい。
 と、
 がばっ
「だ〜れだ?」
 いきなり背後から抱きつかれ、ヒイロの耳にその声が聞こえた。
 誰といわれても、決まってる。ヒイロは言った。
「……ルーシア?」
「あったり〜♪」
 ぱっ、と手がふりほどかれ、
 ぱちぱちぱちぱち
 拍手が聞こえた。
 なんだかいつもの彼女らしくないな、と思い、どうしたのだろうと振り返る。
「なにかあったの? ルーシ……あ?」
 目をぱちくりさせて、ヒイロはまた頓狂な声を上げた。
 そこにルーシアの姿はなく、ぱちぱちぱちと、拍手の音だけが聞こえていたのだ。
「下よ、ひいろ」
「した?」
 言われるままに、つつつつつ、と目線を落としていく。
 そして、
「……はあっ!?」
 ヒイロはその日一番の素っ頓狂な声を上げた。
 なぜならルーシアがいたからだ。

 そして小さくて。


   ☆ ★

 窓際に腰掛け、うつろいゆく空の雲の流れをただ静かに、憂いを帯びた瞳で上げていた。
 天はどこまでも高く、空はどこまでも蒼く、そこにおいての自分の悩みなど、はぐれ消えゆく雲よりもちっぽけなものなのではないか、そう感じる。
 だが自分にとってのその悩みは何よりも大きく、だから見上げているのだ。
 空はいつでもそこにあり、見上げれば自分を優しく包んでくれる。その中にいるだけで心は癒され、少しくらいはそこに身を任せていてもいい、そう思わせる。
 だけど癒されきることはない。現実は常につきまとうもの。
 儚げなため息とともに、空を見上げる。
 どうして
 どうして お金はなくなるの?
 がたがたがたがたがたっ
 派手な音とともに、ふいに腰掛けていた椅子の脚がくずれた。当然、椅子と共に倒れる。
 見上げれば。
 空は、笑っていた。
「……った〜〜〜〜い!! なんなのよもう!!」
 人がせっかく"をとめ"の気分に浸っていたというに。なにか間違ったろうか。
 毒づきながら、レミーナはのろのろと立ち上がった。ぱんぱんと服の裾を払い、それからくずれた椅子を回収し始めた。
「やっぱり安物はダメね……」
 いうまでもなく彼女はヴェーン魔法ギルド当主レミーナ・オーサ。業務は主に内職と内職と内職。方向性は違えど、魔法ギルド始まって以来の、ご多忙当主である。
 くずれた椅子を回収し終わると、慣れた手つきでテキパキと組み立て始める。ものの数十秒もしないうちに、元・椅子は再び真・椅子、へと、華麗な変身を遂げた。さすが安物。壊れるのが早ければ直るのも早い。
 やれやれっとつぶやき、レミーナは椅子を運んで執務机の前に腰掛けた。机の上には開かれたノートが一つ。所々に赤い文字が目立つページだった。そして、レミーナはペンを構え、再びそこへ赤い文字を書き足していった。
 五分経過。
 挫折。精神的に。
「……もうやだ……」
 ぱたん。ノートを閉じる。表紙にはやる気のない字で『かけーぼ』などと書かれていた。
 家計簿。これさえあれば家庭の収入も支出も一目瞭然。支出が収入を上回ると、それは赤い文字で記録される。俗にいう、赤字である。見るだけで頭痛に悩まされ、来月の生活に不安を感じ、なんかあまり健康でないダイエット効果をもたらし、主婦が最も忌み嫌う呪いの文字だ。
 ここ三ヶ月、魔法ギルドは赤字だった。原因はギルド会員が増えたコトによって、レミーナ自身が商売を行うことができなくなったものによるという、なんとも皮肉なものだった。ちなみに会員はキカイ山の子供たちが大多数を占め、当然のごとく入会費など払っちゃいない。彼らの保護者代わりのナルに文句を言ったところ、
『タダより高いものはねーんだよ』
 と、分かるよーな分からないよーな理屈を延々一時間も聞かされ、結局丸め込まれた。いわく、今こうやって彼らの面倒を見ることで、将来立派に成長した魔法使いたちは必然的にギルドお抱えとなり、あとはもう人数にモノ言わせて倍々式に増えて云々。
 しかし、とレミーナは思う。
「……つまり、それまでタダで面倒見ろってことよ?」
 レミーナとてバカではない。腐っても当主、むしろ物事の理はよく見える方だ(腐ってない)。数年先を見すえた時に、今この行為がいかなる利益をもたらすか、分からないわけではない。これはチャンスなのだ、と思う。
 やっぱりしかし。結局、今ここには、この現実があるだけなのだ。今を通らなければ未来へは行けない。
 それでもレミーナは今までにも増してそのやりくりの腕をいかんなく発揮し、今のところギルド存亡の危機、なんて大げさなコトにはなっていなかった。おかげで今までにも増して多忙ではあるが。キカイ山の子供たちがくるときはナルにも思いっきり手伝わせ、ボーガンはこき使い、母のミリアにはその辺で微笑んでもらい、言い寄るボーガンを見つけては叩きのめし、こき使い、サボろうとするナルを見つけては叩きのめし、手伝わせ(かなり強制)、自分は魔法の基礎を子供たちに教えると同時に力を持つということの意味をそれとなく説き(えらい)、それとなく手伝わせ、そんな感じでなんとか自分のペースを維持しつつガンバッていた。
 忙殺の日々を思いだし、なおかつそれが継続中であるという事実に、レミーナは軽いめまいをおぼえた。なので椅子ごと窓際へ移動し、窓枠に手をかけると再び空を見上げる。そして現実逃避モード発動。
 日はまだ高く、自然、目をうっすらと細めた。
 空は変わらない。いつもあり、いつも見ている。
 変わらずそこにあり続ける空に、変わりゆく自分の悩みは映るのだろうか。
 どうして
 どうして お金はな
 みしっ
 …………
 ヤな椅子
 と。
 きらり
「ほえ?」
 天空に輝く青き星。その一部が光ったように見える。目を凝らすと、光はだんだんと大きくなり、こちらへと向かってくるようだった。
 そこで思い出した。アレは転送の光。転送魔法は高度な技術を要する。そんな芸当ができるのはルナ広しといえど、そうそういるものでない。さしあたって思い当たるフシといえば。
「……ルーシア?」
 だとすれば何しにきたんだろうと、思案し。
 え〜っと
 あ
 お手伝いにきたのかな?


 がたがたがたがたがたっ


   ☆ ★

 子供たちがはしゃいでいる。おいかけっこをしたり、チャンバラをしたり、元気に。
 子供が元気だというのはいいことで、それは当たり前のことで、だから大人たちは何も言わずに微笑むだけで、それが日常だということで。
 と、ボール遊びをしていた少女が、ふとしたはずみでボールをあらぬ方向へと転がしてしまった。
 ころころころ、と転がるボールを、とてとてとて、と少女は追い掛ける。今までにも幾度と繰り返された、見慣れた光景。
 こつん、とボールが誰かの足に当たってとまる。少女は見上げた。
「こんにちは」
 ひょいっとボールを拾い上げると、その人は微笑みながら言ってきた。見つめる目が優しくて、なんだか少しまぶしく感じた。とてもあたたかくて、それは――そう、お兄ちゃんだった。
少女はそう思った。
「こんにちわ」
 少女はスカートのすそをちょいと引っ張って、絵本で見るような挨拶をしてみた。
 お兄ちゃんは笑って、
「はいどうぞ。小さなお姫さま」
 うやうやしく差し出されたボールを、少女は両手で受け取った。
「ありがとう。お兄ちゃん」
「どういたしまして」
 胸に手を当てて、軽く一礼。
「それじゃ」
 お兄ちゃんは短く言って、広場をまっすぐに歩いていった。
 あれ?
 服のすそにしがみつくようにして、自分と同じくらいのちっちゃな少女がお兄ちゃんの後ろについていってる。後ろ姿だけど、蒼い髪がさらさら流れていて、お人形みたいでとっても綺麗。

 お姫さまだ。

 少女はそう思った。
 

   ☆ ★

 こんこん。ノックの音。
「どうぞ〜」
 なんだか疲れたような声。
 とりあえずドアが開けられ――そしてヒイロは首を傾げていた。思いを口に。
「何してるの?」
「直してるの」
「何を?」
「イスを」
「そう」
「そう」
 窓際に座り込みつつ、とんてんしゃん。
 ごそごそごそと、しばし経つこと。そこに椅子ができあがり、レミーナは少し引きずるようにしてそれを執務机のところへ持っていった。自身はそれに座らず、机に寄りかかるようにして立つと、ヒイロを見やった。
「で」
 切り出す。
「何しにきたの?」
 端的な質問だった。だけど、
「え〜っと……」
 ヒイロは返答に窮する。
「言いにくいの? 説明しにくいの?」
 レミーナはとっとと促す。
「……両方かな?」
 考え込む仕草を見せながら、ヒイロは答えた。
 なんだか煮え切らないその態度にレミーナは妙にイライラした。
「どーでもいいけど、部屋入りなさいよ。入り口突っ立ってないで」
「ん? あ、ああ、それもそうだね」
 ヒイロはちょっと慌てたように反応したが、ふう、となんだか覚悟を決めた様子で部屋へ数歩入ると、背後へと手を回した。
「おいで」
 すると、ぽんぽん、とゆっくり押し出されるようにしながら、一人の少女がおずおずと前へ出てきた。
「ふえ?」
 レミーナは目を丸くした。
 少女はどこか見覚えのあるヘアバンドをつけ、どこか見覚えのあるショールを掛け、どこか見覚えのあるメダリオンを首からぶら下げ、どこか見覚えのある……蒼い髪。
 いや。
 そんなことはどうでもいい。ただ、
「か――」
 ヒイロにしがみついたまま、少女はきゅるんとした瞳でこちらを見つめている。
「かわいい……」
 レミーナはつぶやいた。つぶやいて、同時に妙に熱っぽい眼差しで少女を見つめ返す。
 この可愛さは、一家に一台欲しいカンジ? などと、なんだかアブナイ考えを抱いてみたりもする。
 それくらい、少女は無垢な愛らしさを持っていた。
 が、レミーナがあまりにじっと見つめるので、少女はふたたびヒイロの陰へそそくさと隠れてしまった。隠れてしまったが、顔半分を出すようにしてちらちらと様子をうかがっているところがなんとも。
 ヒイロはそんな少女をよしよしとなでていたが、やがて苦笑しながら口を開いた。
「実は……」
「ちょっとヒイロ」
「ん?」
「育児は専門外よ」
「……へ?」
 ぱちぱちと目を瞬かせるヒイロ。
 それに構わずレミーナは寄りかかっていた机から立ち上がると、ヒイロの横へ回り込み、少女の向かいにしゃがみ込んだ。手をさしのべると少女はぴくっと反応したが、髪をそっとなでてあげるとおとなしくなり、こちらを不思議そうに見返してきた。大きく見開かれた瞳に、なんだか吸い込まれそうになる。
 ふいに、レミーナは気づいた。
「ねえヒイロ」
「……なに?」
 なぜか片手で頭を抱えているヒイロだったが、レミーナは続ける。
「この娘、どう見ても五才以上よね」
「じゃないかな」
「計算合わないじゃないの」
「なんの計算さ」
「あなたとルーシアがルナへ戻ってきてから」
「うん」
「その……えと……」
「うん」
「…………乙女になに言わせようとするのよッ!」
「ええっ!?」
 レミーナは顔を真っ赤にして立ち上がると、いきなりヒイロに怒鳴った。
 ヒイロは何がなにやら分からず、たじたじ。
「わかったわ! さては隠し子ね!? 見損なったわよヒイロッ!」
「もしもし?」
「もしもし? それが名前? ヒドイッ! こんな可愛い娘なのにッ!!」
 すっぱーん
 乾いた音が、室内に響いた。
「……痛いわ、ヒイロ。同時にナイスツッコミよ」
「ごめんよ。同時にいやそれほどでも」
 そう言ってヒイロはどこからか取り出したハリセンをどこかへしまい込んだ。
「えっとね」
 そして何事もなかったかのように、口を開く。
「この娘さ、実はルーシアなんだよね」
「うん。なんとなく途中から分かってたけど」
 具体的には「ふえ?」と間の抜けた言葉を発したあたりから。なんかまたツッコミがきそうなので、それは心の中だけに留めておく。
 ヒイロはこうなった経緯を話し始めた。といっても、不明な部分が多く、要するに寝て起きてみたらルーシアは小さくなっていたのである。
「それは怪現象ね」
 ヒイロの話を聞き終わると、レミーナは腕を組んでそう言った。
 そして、真剣に続ける。
「あたしも小さくならないかしら?」
「論点がずれてるよ」
「あたしの"論"は其処にあるのよ。だから主観。いやホントに」
「意味わかんないし。それでさ、元に戻せるかな?」
「……このままでもいいと思うけどぉ?」
 と、レミーナはちびルーシアの頬をぷにぷにと引っ張る。
「原因が分かれば君も小さくなれるかも」
「さあヒイロ、この世に解明できない謎はないのよ! 真理の追究はギルドを束ねる者としての性、いえ、使命といっても過言じゃないわッ! さっそく事態の究明に急ぐわよッ!!」
 ぷにぷにと引っ張りながら、レミーナは萌え、否、燃え始めた。ちびルーシアはなんだか迷惑そうに顔をふくらませているが、引っ込み思案なのかされるがままに任せている。がんばれぇ。
「ま、冗談は半分に留めておいて、とりあえず場所を変えるわよ」
「半分じゃ困るんだけど。まあ……で、どこにする?」
 ちびルーシアが腕を掴んでぱたぱたと外そうとするので、渋々と手を引っ込めながら、レミーナは言った。
「試練の迷宮」
 なぜか微妙に低音だった。

 試練の迷宮。
 昔、空をふわふわ飛んでいたヴェーンに行くためには地上から転送の魔法陣に乗るしかなかった。で、どこの誰が仕掛けたのかは知らないが、魔法陣に最初に乗る者は自動的にこの試練の迷宮に送られるようになっていたのだ。迷宮を抜けることができなければヴェーンへ入る資格がもらえないのである。
 アンタ何様のつもりやねん
 おそらく、何人もの人々がそう思いながら迷宮をうろうろしたことだろう。でまあ、見事クリアした大多数はその何様になっていたわけだが。
 もっとも、今現在ヴェーンは大地に足をつけているので、そんな迷宮など経由しなくても階段使ってさっさと行けてしまう。結構高いから年寄りには試練かもしれない。いやここはひとつ、健康のために。
 そんなことより試練の迷宮である。
 ようするに、試練の迷宮はその役割を完全に停止させているのだ。一応地上の魔法陣と繋がっているが、別に近道にはならない。途中には所々モンスターも住み着いているし、危ないことこの上ない。ただ、迷宮を名乗るワリにはそこかしこが結構崩れていて、しかも正解の道は崩れてなくて、なんか名前負けしている。
 で、この迷宮、ヴェーンの方から入ってすぐがちょっとした広間になっていて、そこがなにかと多目的に利用できるのだ。音響効果はなんとおふろレベル。どうせ誰も入ってこないので歌の練習とかに最適である。あと、おそらくは結界でも張っているのだろう、モンスターもその広間までは入ってこない。
 レミーナは時々ここで魔法の実験などしている。そして今回やろうとしていることにも、この場所はうってつけであるといえた。

 迷宮に入ると、レミーナたち三人は広間の中央へと歩み寄った。
「さて。じゃあ今からルーシアを元に戻してみるワケだけど……その前に」
 レミーナはくるんと振り返り、かがみ込み、ちびルーシアをじっと見つめた。
「ねえルーシアちゃん。あたしが誰だか分かる?」
 ふるふる
 首を横に振るちびルーシア。なかなか素早い反応だ。即ふるだ。
「え〜っと……でも、このお兄さんが誰かは分かるのね?」
 こくこく
 首を縦に振るちびルーシア。なかなか迅速な反応だ。即こくだ。
 それから、
「ひいろ」
 と、小さくつぶやいた。
 レミーナは腕を組んで考える。ヒイロは記憶にあるのに自分が忘れ去られているとはどういうことか。ヒイロの話を聞いて、ルーシアは記憶を無くしたわけではないと思っていた。しかし現に自分は忘れられている。
 もしかすると、記憶がないのではなく、単に覚えてないだけかもしれない。
 うん、きっとそうだ。
「ねえルーシアちゃん」
 ずずい、っと顔を近づける。
「あたしの名前はレミーナ・オーサ。歴史と伝統あるヴェーン魔法ギルド当主レミーナ・オーサよ」
「れみぃ……な?」
「そうそう。覚えてない?」
 ちびルーシアは自分の胸元をぐっとつかんで、なにか懸命に思い出そうとしている。思い出そうとしているということはつまり、なにか引っかかる部分があるのだ。
 よし。
「ほら、優しくて笑顔がステキで元からステキの魔法少女レミーナちゃん」
「しらない」
 即ふるだ。
 と、そのとき、今まで黙っていたヒイロがぼそっと言った。
「おカネが大スキの」
「……おかね? れみーな?」
 その言葉でふたたび考え込む様子を見せると見せかけ、ちびルーシアはぱあっと顔を上げた。そのままレミーナに飛びつく。
「れみ〜なっ♪」
「きゃっ」
 レミーナは唐突に抱きつかれて倒れかけるところを何とか踏みとどまった。なんか文句を言おうと思ったが、すぐにすりすりと猫のようにほおをよせてくるちびルーシアに、はにゃ〜っとなる。
 が、同時に、
(おカネであたしを思い出すなあッ!)
 やり場のない心の叫び。
 しかしちゃっかりとちびルーシアを抱きしめ、
(まあいいか)
 叫び終了。
 レミーナは立ち上がり、片手に持っていたステッキをくるくるっと回した。
「さあっ、あたしも思い出してもらえたことだし。そろそろやろっか」
「動機になってないような……」
「細かいこと気にしないのよ」
 ヒイロの指摘を一蹴すると、レミーナはステッキの先を地面に突き立ててかりかりと線を引き始めた。
「よっ」
 三角形をひとつ。
「もいっちょ」
 逆三角形をひとつ。ヘキサグラム完成。はやっ。
「えいっ」
 まる。ヘキサグラムを囲む。
「よっと」
 もひとつまる。さらに囲む。
「えいえいえい」
 まるとまるの間に文字を書き足していく。くるりと一周。
 魔法陣完成。
「ふう〜、ざっとこんなもんね」
 汗も掻いてないクセに汗を拭う仕草をして、レミーナは自作の魔法陣を眺めた。
「さてと」
 ちょいちょいとちびルーシアを誘うと、レミーナは魔法陣の中央を指さした。
「ここに立ってくれる?」
 しばらくそれを眺め、ちびルーシアはこくりとうなずいた。てくてくてくと魔法陣へ入っていき、中央へつくとちょん、と立ちつくす。
 と、ここで成り行き見守っていたヒイロが口を開いた。
「具体的には何をするわけ?」
 ぐいぐいっと腕まくりなぞしながら、レミーナは『ん?』っといった感じでヒイロを見やる。それからむ〜っと思案するように虚空に視線を適当にさ迷わせ、しかしすぐに口を開いた。
「イレースするのね」
「いれーす?」
「ルーシアにかかってる魔法効果を全部消去させちゃうの。アレはたぶん魔法的なものによるものだと思うけど、原因が不特定だからしっちゃかめっちゃか消去でポン」
「あ、なるほど。でもさ、それだと原因は結局分からずじまいじゃ?」
「ルーシアが戻れば分かるわよ。……分からなくてもまあ、治れば結果オーライ。小さくする方法が分かればそれはそれで万々歳」
「……君って、純粋に欲張りだね」
 ヒイロが呆れたようにいう。
 だけどレミーナはにやっと笑い、ちびルーシアの立つ魔法陣へと向き直った。
「だからあたしなの」
 言って、ステッキを構える。途端、静寂が場を包む。
 魔法使いにとって集中力というのは非常に大事なものである。魔法力を集め、形作り、放つ。どれかひとつに集中力が欠けるだけでもそれは非常に曖昧なものとなり、その真なる力を発揮しない。ならば逆に、集中力の高さで魔法使いとしてのレベルが決まるといってもいい。
 そしてレミーナは魔法ギルドの長、こういっては何だが魔法使いの頂点に立つ存在である。
 その集中力はその場にも及び、自身が理想とする空間をそこに創り出す。
 ヒイロはその様子をじっと見守り、レミーナはやがて言葉を紡ぎ出した。

 九天応天雷声普化天尊――

「ちょっとまった」
 がし
 集中してるところ悪いけど、といった風情でヒイロが肩をつかむ。
「どしたの?」
 不思議そうな表情で、レミーナが振り返った。中断させられた事による不快感はないようだ。
 ちょっと気むずかしい顔で、ヒイロは言った。
「今の呪文、なに?」
「へ?」
 言われて、え〜っと、と、ちょいと見上げるように考え込んでから、視線をヒイロに戻す。
「臨兵闘者皆陣列在前、の方が良かった? でもなんかベタだし」
「ちがう」
「じゃあ貪狼、巨門、禄存、文曲、廉貞、武曲、破軍?」
「そーじゃなくて」
「真言は知らないから却下よ。おんしゅりまりまそうぎそわか。なんちゃって」
「だーかーらっ」
「……なんなのよ?」
「普通に」
「普通に?」
「そう」
「たまには気分を変えて」
「今度でいいから」
「ちぇっ」
 いい機会だと思ったのに。しかたない。
 ふたたび魔法陣に向き合うと、レミーナはハラ立ち具合を魔法力の制御に向けるという器用なことをしながら、目を閉じて呪文の詠唱を始めた。

 女神アルテナの名においてレミーナ・オーサが命じる――

 紡ぎ出された言葉は力となり、力はそのまま対象へと向かう。
 詠唱を重ねていくごとに、次第に魔法陣が淡い光を放ち始めた。
 ちびルーシアは光る地面をきょとんと見つめながら、特に何をするでもなくぼ〜っとしている。
 光はますます強くなり、やがて、あまりの眩しさに目を開けていられないかというその瞬間。

 理よ

 有無を言わさぬ絶対的な口調で。言葉は静かに広間に響きわたる。
 それを引き金に、魔法陣から光が爆発的に吹き出した。光の奔流は螺旋を描くように上昇し、天井を流れて広間全体に広がっていき、そこに在るものたち全てを包み込んでいく。
 音はない。全くの無音。静寂の無空間。
 それもつかの間、やがて光は薄れていき、ふたたび在るべき空間がそこに姿を現す。
 レミーナはゆっくりと目を見開いた。
 そして、
「ふっ……」
 自信に満ちた笑み。自信に満ちた声。
 自信満々な態度で、
「失敗ね」
 肩をすくめた。
 ずるっ
「ん? どしたのヒイロ?」
「い、いや……なんでもない」
 隣でバランスを崩しているヒイロを見て少し首を傾げてはいたが、まあいいかと思い魔法陣の中央へ視線を戻しす。
 そこでは最初と変わらない状態で、ちびルーシアがきょとんと立っていた。
「う〜ん、派手にやったワリには効果なしね。ていうかさ、ルーシアって魔法に対する抵抗高スギない? 手応えほとんどないワケよ」
「そりゃあちっちゃくてもルーシアだし。むしろ意識的というよりは本能的に魔法力を動かしてるぶん、ちょっとやりづらいんじゃないかな」
「あらヒイロ、ずいぶん賢くなったわね」
「都合上」
「あ、そ」
 素っ気なくいうと、レミーナはステッキをくるくる回してぱし、と持ち替えた。
「まーあたしもそううまくいくとは思ってなかったけどねー、ここまで成果が出ないとちょっとムキになりたくもなるのよねー」
 かっ、と地面にステッキを当てると、
 がりがりがりがりっ
 レミーナは線を引きながら駆けだした。ちびルーシアの立つ魔法陣を中心に、妙にいびつな図形を描きだしていく。
 最後に目印のように図形をぐるっと囲む線を引き、そこで息をついた。
「ざっとこんなもんね」
「さっきも聞いたけど……」
 心配そうにいうヒイロ。しかしレミーナはちっちっちっと左右に指を振って、
「ノープロブレムよ」
 答えになっていないような答えを言った。
 しかしすぐに説明を始める。
「イレースするのは失敗に終わったから、こんどはシンクロさせるワケよ」
「ああ、それはなんとなく。同調させるわけだ」
「そーそー。この場合の同調っていうのは一方の『今』ともう一方の『今』を関連づける現象なワケで、つまりあたしの『今』をルーシアの『今』に直結させて、強制的に肉体と精神のレベルを引き上げて、結果的に元の姿に戻すワケよ」
 しょせんはただの理屈だけどね、などと心の中で付け加え。
「……なんか物騒な物言いだね」
「まーまー、危険はないから(たぶん)。そんなわけだからちょっと下がってくれる? さっき描き足した線の向こうまで」
「はいはい」
 ヒイロが線の向こうまで下がったことを確認すると、レミーナは満足そうにうなずいた。が、
「ところでこのヘンな図形、大丈夫なの? なんか失敗してない?」
 しげしげと地面を眺めながらヒイロが言う。
「失礼ね。れっきとした七芒星じゃない」
「いや、現物見たことないしさ」
「ま、あたしも初めて使うしね」
「ああなるほど」
 納得してくれたようなので、レミーナは二重魔法陣の中央に位置すると、片手をちびルーシアの肩に、もう片方の手でステッキを突き出すように構え、静かに瞳を閉じた。
「って、ちょっと待――」
 ヒイロが慌ててなにかを言おうとしたときにはすでに、その体勢に入っていた。

 青き星のルーシアの名と共にヴェーン当主レミーナの名において命じる――

 先ほどとはまた違う呪文の詠唱。収束する魔法力は格段に強く、しかしどこか安定した方向性を持っていた。やはり魔法陣が淡い光を放っているが、それ以上の輝きを放つことはない。
 代わりに、というのだろうか。
 中央に佇むふたりを包み込むように光が発せられた。光球の中でふたりの姿は次第におぼろとなり、やがて人影がひとつとなったように、見えた。その時にはすでにそれは光の中に完全に埋もれ――。
 やがて。
 光を見つめ、手をかざしていたヒイロはゆっくりと収まりゆく光の中へふたつの人影を見ていた。
 いまだに光で輪郭がぼやけているが、そのうちの片方が立ち上がって、立ちつくすヒイロと向かい合った。
「ル――」
 なにかの単語を言おうとしたのだろうが、その時点でヒイロの動きは止まった。
 なぜなら、人影は、自信に満ちた態度で。
 えっへん
 ふんぞり返り。
「失敗よ」
 そんなことをこともなげに言ったのだ。それがさも当然であるかのごとく。
「……なんで君はそう、失敗って言うことを自信を持って言えるわけ?」
「自信があるからよ。誰が見てもどこから見ても完膚無きなまでに失敗これ真実」
「ヤな自信」
 かなり率直であろう感想を、それこそかなり率直に述べる。
 だけど当の少女自身は意に介した様子もなく――
「あー……レミーナ、だよね?」
「もちろん。どう? 可愛いでしょ?」
 言って、少女はくるんとその場で回ってみせた。
 少女は――レミーナは、だから、少女で。
 ルーシアはその隣で、やはり、小さく。それと同じくらいに、レミーナも小さくなっていると、そんなことは指摘されるまでもなく、すでに自分でわかっていたのだ。
 着ている服も一緒に小さくなっている、それも、つまりはルーシアと同じ現象で。
 名実ともにちびとなったレミーナは、それでもえらそうにピンと指を立てて、言った。
「結論」
「うん」
「ちょっとばかりルーシアの方が強かったようね」
「意地っ張り」
 ジト目でヒイロ。
「ホントだもん。現に変わったのは外見だけだもん」
「はいはい」
 取り合わないヒイロに、ちびレミーナはむ〜っと唸る。その横でちびルーシアがその様子を不思議そうに見つめている。両方ちびだが、背はやや、レミーナに分があるようだ。……あ、背伸びしてる。
「ま、あたしの手に負えるモノじゃないってのはわかったわ」
 そしてちびレミーナは中央の魔法陣から抜け出した。
 するとなにかの冗談のように、それこそ目を疑う間もないうちに、レミーナはそこにいた。
「……なんだか、今更ながら魔法ってすごいって思うかな……」
「今回のは極めて特殊。なんならヒイロも小さくなってみる? ほら、ルーシアがあそこにいるうちなら効果は持続するわよ」
「いや、やめとく」
「あらそ。残念」
 素っ気なく未練がましく言うという離れ業を見せつけながら、レミーナはさっとステッキを振った。途端、ちびルーシアを中心に展開されていた魔法陣が一斉に消える。
「ここにはもう用事はないわ。外行くわよ」
 あっさりとそう言って、真っ先に自分が出ていった。


   ☆ ★

「結構長くいたと思ったけど……あんまり日は変わってないね」
 う〜ん、と大きく伸びをしながら、ヒイロは空を見上げる。となりではルーシアがモノマネよろしく、小さい体を懸命に、つま先立ちして精一杯大きく伸びをしている。
「……それはもうちょっと努力しなさいということかしら?」
 じと。レミーナに横目で見つめられ、
「い、いやそういうわけじゃあ」
「冗談よ」
 慌ててフォローするこちらを見て、けたけたとレミーナは笑ってくる。
「でもま、たぶんこれ以上やっても無意味だと思うわ。魔法使いとして考え得る方法から二つを選択したけど、結果が物語ってる。あたしの出した結果はそのまま、魔法による結果と考えていい。だからつまり、これは管轄外、よ」
 と、レミーナは軽く肩をすくめ、
「まあ、これはちょっと畑違いかもね。あたしがやったのは『変える』ことで、『治す』ワケじゃないから。もしこれが『治す』ことで元に戻るっていうんなら――神官に頼んだほうがいいかも。なるたけ腕のいいのに。どっかにいるでしょ、ヒマそうな神官が」
 ヒイロは、つと考える。
「どっかにいるね、ヒマそうなのが」
「でしょ。たぶん退屈しのぎだとかいってノッてくるわ」
 退屈しのぎなのか、博打なのかは知らないが。あ、博打はやめたんだっけ。
 あはははは、とノンキに笑い合っていると、建物の向こうががやがやと騒がしくなってきた。
「そーいやそろそろ授業の時間ね」
「青空教室?」
 騒がしいのは外だ。ヒイロは訊いてみた。
「実習は外。あの子たちったらね、ろくすっぽ扱えもしないのにミエ張って魔法使おうとするもんだから、部屋の中じゃ危なっかしいのよ。でもま、どっちみち外にいる方がのびのびしてるからいいんだけどね」
 大変なのよ、と言うレミーナの顔は、しかしどこか満足げだった。
 久しぶりにあったけど、レミーナはやっぱりレミーナだな、とヒイロは思った。
「ああそうそう。ね、ヒイロ。おみやげとかないの?」
 やっぱりレミーナだな、と思った。
「今日はちょっと動転してたから、持ってきてないよ」
「そう。それは残念ね。それじゃ、またの機会にお願いするわ」
「うん」
「未知の遺跡とか潜って面白そうなガラクタ見つけたらあたしにちょうだいね。有効利用したげるから」
 さらりと、結構とんでもないことを言い出す。
 とりあえずヒイロは、
「わかったよ」
 約束しておいたが。
 がやがやがやと、向こうの方でざわめきが次第に大きくなっている。
「……そろそろ行かないと、静めるのが面倒ね。それじゃヒイロ、あたしは行くわ。ルーシアも、またね」
「うん。レミーナもがんばりなよ」
 がんばりなよ、と、小さいルーシアもエールを送る。単に真似ているだけもするが。
 そして、レミーナは小走りに建物の陰へと消えていった。
 軽く手を振ってそれを見送ったあと、ヒイロはルーシアへ向き直った。
「さて、行こうか。頼めるかなルーシア」
 こくり
 ルーシアはうなずいて、胸の前で手のひらを合わせるように構え、瞼を閉じた。
 ぽそぽそと口元が動いているが、何を言っているのか理解できなかった。というか、発音そのものからして聞き取れないのだが。
 ぽうっ
 唐突に光が出現し、ふたりを包み込む。それはふわりと宙に浮き、地面からふたりを切り離す。
「――いきます」
 いつか聞いたような口調で、ルーシアが静かに言った。小さくても、やっぱりそれはルーシアなのだと思わせる。
 そして光は、蒼穹よりもなお蒼いその星へ吸い込まれるようにして、すぐに消えていった。


   ☆ ★

 振り返ると、真昼の流れ星が彼方へと消えゆくところだった。
 レミーナは少しだけ足を止めて、その方角を見やった。
 騒動が好きなふたりだ。だけど、そういえば自分もそれに負けず劣らず騒動を起こしていたような気がする。あのふたりに巻き込まれてそんなことを思い出し、ふと暗い気分になっていた自分がそこにいないことに気づく。
 苦笑。
 頼まれることで。
 手伝わせることで。
 こちらのペースへ乗せることで、逆に向こうのペースにいたといえる。
 感謝しなきゃね、と、拝むような仕草を見せ、レミーナは歩を進めるべく向き直る。
「あ……」
 ふと。本当にふと。
 引っかかっていた何かを思いだして、肩越しにもう一度振り返った。
 当然、何が見えるわけでもない。何も言わずにただ見守っている青き星があるだけだ。
 そして思い出した。それを。
 先ほど、ルーシアと同調を試みたときわずかに触れてしまった、その想いを。
 それは――
「……まさか、ね」
 そんなはずはない。きっと、意識がごっちゃになっていて、そう感じただけだろう。
 ヒイロはあんなに一生懸命なんだから。
 まさかそんなことを想うはずがない。
 まさか――ね。

 ――このままでいいから――

 なんて、想うはずが――。


 青き星は何も言わずにただ見守って、そこに在るだけだった。



   おわり


   ★ ☆

   ☆ ★


 ……って、終わりかよ。これだから突発ネタは。
(なんで彼女は小さいですか?)
 知らん。
(登場人物少なすぎ)
 構うかよ。
(本筋が見えませんが)
 ネタだって言ったじゃないか。定番だろ。小さくなるのって。
(――なんの?)
 パロディ。
(……で、続きは?)
 え? 終わりじゃないのか?
(……え? ロンファに会いに行ったような展開じゃないですか)
 展開だな。
(でしたら)
 ロンファって男だし。
(はあ)
 男だし。
(――それだけ?)
 それだけ。あ、でもセットでお得なマウリさんがいますがな。
(お得ですか)
 むしろロンファをピンハネする勢いだな。
(むごいですね)
 哀れなロンファ君に幸あれ、だ。
(さらにむごいです)
 慈悲深いと言ってくれ。まあいいけど。
(で、続きは?)
 だから無いって。これだって適当だろ、なんか。
(ああ、言われてみれば改行とか適当ですね)
 やる気のなさの現れ。いうほど無くもないが。ビバ自分。
(ほめられても)
 べりーぐっど。
(だから)
 まーべらす。
(あの)
 えくせれんと!
(コラムスですか)
 おう。97な。あんまし上手くないが。
(わかりにくっ)
 うるせ。てゆーか、疲れたので終わろうな。
(そうですね)
 ……。てゆーか、なんでふたりにわかれてんだろうな。
(ジキルとハイド)
 ンなわけあるか。
(トムとジェリー)
 ちょっと違うだろ。
(ヘンデルとグレーテル)
 野ざらしの菓子の家なんて食う気しねーよな。関係ないけど。
(家&塀)
 それだ。
(てゆーか、疲れたので終わらないんですか?)
 ん? そうだな。疑問も解けたことだし。
(根本的なところは解けてない気もしますが……)
 にしても、これ、読んでもしかたないよな。
(ですね)
 注意書きしとくか。
(それがいいでしょう)
 うし。

 ※注 上の文章は読んでもしかたないのでヒマじゃない人は読まないコトをおすすめします

 おっけ。
(……そこはかとなく意味ないような)




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