知らない筈の事を知る空
空は全登場キャラの中でも最もブリックヴィンケルに近い存在と言えるのではないだろうか。
LeMU内部という小世界に限定されるとはいえ、彼女の目は全てを同時に見渡す事ができる(故にクヴァレの中での武とつぐみを見てしまって苦しむ事となった)わけだが、この彼女の視界は4次元存在たるブリックヴィンケルの「サイコロの6面を同時に見ることができる視界」に近いといえると思う。
そして、その気になればどこにでも現れる事ができる。遍在する事ができる。
もしかしたら、空がテラバイトディスクには記録されていなかった筈の「ポチっとな」や「ピグマリオン」を知っていた理由はここにあるのかもしれない。
既に別の考察で述べてきた通り、Ever17の世界において全ての存在は他者に見られる事によって存在できるのだとしたら。その内容の正誤に関わらず、観測者の観測結果が現実となる事がありうるのならば。
空はホクトと武の向こう側にいるブリックヴィンケルによって「4次元存在に似た特徴を持つ存在」として観測された結果、これが現実となり、それ故に別の歴史で得た記憶を持ち得たのかもしれない。
しかも、それぞれの世界で空を観測したブリックヴィンケル同士は別の存在であると同時に同一の存在であるとも言える。もしも観測者がブリックヴィンケルではなく3次元存在であったならば、違う世界に生きる同一人物同士には絶対の隔たりがあるために、観測された空は普通に別個の存在となっていたとも考えられる。
よって、空の記憶の件は別の世界をも知る事を可能とするブリックヴィンケルが観測者であったからこそ起きた「奇跡」だったと言えるのではないだろうか。
なお、もしも上で述べた通りであるならば、ブリックヴィンケルが遍在する自己をひとつにする事ができなければこの「奇跡」は起きなかったという事になると思われる。
ならば空が武に対して4次元に関する話をしたのは、その時彼女が既に4次元存在に近付きつつあり、ブリックヴィンケルの完全な覚醒を手助けすれば、自身も遍在する自己をひとつにする事が可能であり、しかも優春の計画の成功によって悲劇を修正できるという事をわかっていたからだとも考えられる。
「4次元存在に近付きつつあり」としたのは、グランドエピローグ前の空が全てを知っていながら知らないふりをしているようには思えなかった為である。そもそも私の考えでいくと、上記の時点で空が全てを知っていたならば、同時にブリックヴィンケルも覚醒している事になるので矛盾する。
恐らくブリックヴィンケルが不完全ながらも覚醒しつつあった為に、限定的に、或いは一時的に彼女は知り得ない筈の事を知る事が出来たのではないかと私は考えている。
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