ひぐらしのく頃に
鬼隠し編推理・考察


冒頭のシーンの語り手は誰か

 一見圭一であるかのようにも思えますが、確実にそうと断言できるだけの証拠はなかったりします。
 が、竜騎士07さんも作成に関わっていたドラマCDを聴くにこのシーンの語り手の声が圭一役である保志総一朗さんの物であるようなので、最初に挙げた可能性が高まったかもしれない。
 個人的にはこのシーン、声によって語り手を絞り込む事が出来ないようドラマCD版ではカットされるかもしれないと思ってたんですけどね。

 ただし、この事によって完全に圭一であると断言できるようになったのかというと、まだわかりません。なぜなら保志総一朗さんが今後違うキャラを兼任される可能性も絶対にないとは言い切れないので。

 ともあれ現時点で得られる情報を元に考えるなら誰である可能性が最も高いかという事であれば、圭一ということになるんじゃないでしょうか。



圭一が体験した数々の現象について

 ■本当に超常現象だったのか
 私は違うと思います。以前メモに書いたように幻覚が原因であったと考えるのが一番自然なのではないかと。では、そうと裏付ける事象が果たして本編に存在していたのかどうか。
 まず、幻覚の原因となりうる何かとして私が考えたのは脳内麻薬でした。そのキッカケは祟殺し編での圭一の変貌、沙都子の叔父を追跡する場面での超人的な身体能力など。脳内麻薬によって所謂火事場の馬鹿力が発揮されていた状態だったのではないかと解釈できます。

 ■本当に脳内麻薬が原因だったのか
 無論辻褄が合ったとしても本編の描写による裏付けが存在しなければあまり意味がありません。が、私は裏付けはキッチリ存在していると思います。
 例えば鬼隠し編における圭一によるモノローグにて「脳内物質」が云々というくだりが何度となく登場しています。

 ■ではどんな脳内麻薬が原因だったのか
 無論脳内麻薬、所謂神経伝達物質にも色々な種類があるわけで、ならばそれらの内で実際に幻覚症状を引き起こす物がないかと調べてみました。結果本編での圭一のあらゆる特徴に通じる物を発見。それがドーパミンというやつでした。

 ■ドーパミンとは
 色々な特徴がありますが、圭一の例において関連しそうな物を以下に列挙します。

 1:過剰に分泌されると幻覚・妄想の原因となる
 2:覚醒剤に似た構造を持ち、分泌されると「ハイ」になる
 3:火事場の馬鹿力の原因となりうる
 4:日常において様々な行動の「動機付け」を行う


 1について
 その実態が幻覚や妄想であったのではないかと思われる事象について列挙してみます。

 「白いワゴンに轢かれそうになった」
 ……と、圭一本人は思っていますが、実際にはワゴンは事前にクラクションを鳴らしています。故に元から彼を轢くつもりで現れたとは考え難いです。
 圭一の方へ突っ込んできた、もっと前から徐行して後を付けて来ていたなどと言った事も含めて彼の妄想でしかなかった可能性が考えられるんじゃないかと。
 或いは圭一の方へ突っ込んできたというのは野生動物かなにか(山の中ですし)を避けた結果そうなったとも考えられるかもしれない。
 また、ワゴンのドライバーが何も言わずに走り去ったのは実際には田んぼに落ちたのは、接触していなかったのにも関わらず圭一が派手に避けたのが原因である事と、なんらかの急ぎの用事があったからだとも考えられるかもしれない。

 「背後の気配」
 幻覚でしょう。鬼隠し編ではレナ、祟殺し編では悟史だと圭一は思っていたようですが、それぞれのシナリオにおいて理由は違いますが強く意識していた人物ですね。

 「おはぎの針」
 これも本当は何か別の物がイタズラとして仕込まれていたのを勝手に針だと勘違いしたのではないだろうか。これまた幻覚か。

 「TIPSのセブンスマート」
 過去の確定した事象を思い返しているだけである筈なのに後ろを振り返る事など出来るわけありません。これも妄想でしょう。

 「現場監督」
 常識的に考えれば生きている筈はない人物が生きていると思いこんでしまった。これも妄想?

 「魅音が取り出した注射器」
 伏線としての「おはぎ」の罰ゲーム。そして「富竹さんと同じになる」という言い回し。富竹さんが殺害された事を知っていた圭一は自分も同様に殺害されると勘違いしましたが、実際には前述の二つを合わせて考えるに圭一のシャツにラクガキをしようとした、といったところだったのでしょう。胸倉を掴んだのはシャツのシワを伸ばしてラクガキしやすくする為だったんかな?
 つまり、魅音が取り出したのは注射器ではなくサインペンか何かで、富竹さんの殺害方法に関して未知の薬物による可能性も頭にあった圭一は、棒状でキャップを外せば先端が先細っているそれを注射器と誤認したのではないだろうか。つまりこれも幻覚。

 2について
 例えば祟殺し編で沙都子が性的虐待を受けたと察した直後に彼女の叔父殺害計画を凄まじい速度で思考する場面や、実際彼を山中で追跡している場面での描写がわかりやすいかと思います。
 極度の興奮状態にあり、普段の圭一とはまるで別人のようになっているのがわかるかと。

 3について
 典型的な例は祟殺し編における沙都子の叔父を追跡するシーンにおける極めて優れた運動能力でしょう。彼は本来特別運動能力が優れているわけではない事は少し前のシーンでも述べられています。
 また、鬼隠し編終盤で魅音とレナを殺害してしまう場面。羽交い締めにされた状態から瞬時に逆転し、金属バットを手にしたとはいえ格闘能力に優れた魅音とレナを二人同時に相手をして一方的に殺害してしまっています。

 4について
 ドーパミンは日常のあらゆる行動に関する動機付けをする役割を負っているとか。例えば何らかの行動に自分にとって意味があればそれを実行しようとする際にはドーパミンが分泌されるのだという。

 さて、ここで祟殺し編での学習塾で聞かされた話です。
 圭一は意味を持たない問題に関してはその優れた頭脳を全く発揮できない。その逆ならば極めて優れた結果を叩き出した。つまり、後者の原因はドーパミンの過剰分泌によって本来の能力を充分引き出せた事であると考えられないだろうか。
 そうであったとすると元々圭一は潜在的にドーパミンの過剰分泌に起因する幻覚・妄想といった症状に陥りやすい人物であったとも考えられるかもしれない。

 以上に挙げられた特徴は、本編における数々の事象と見事に噛み合っています。よって私は多くの不可解な現象の原因はドーパミンの過剰分泌が原因であると考えます。

 ■ドーパミンが過剰分泌されたのは何故か
 これに関しては神経伝達物質に関して調べている際に、ドーパミンに目をつけてからそちらを集中して調べて行く過程で知った事なのですが、統合失調症とよばれる物の症状の中の幾つかはドーパミンの過剰分泌が原因となっているらしいです。

 ■統合失調症とは
 かつては精神分裂病と呼ばれていた物で、この呼称には差別的なイメージがあるとの事から近年改称したそうです。ひぐらしの舞台は昭和五十八年ですから、もしも解答編にて言及されるような事があるのなら、精神分裂病という呼称の方が用いられるかもしれません。
 上の方で圭一はドーパミンの過剰分泌に起因する幻覚・妄想といった症状に陥りやすい人物であったのではないかと推測していますが、彼が統合失調症であったのであれば納得がいく気がします。

 さて、繰り返しになりますが辻褄が合うだけではあんまり意味がありません。圭一の症状が統合失調症によるものであるのならば、本編中にそれを裏付ける物があったかどうか。無論既に述べている通り彼の症状からその可能性が考えられますが、他にも何か裏付けになる物はないだろうか。
 そこで私はふと、祟殺し編における学習塾でのやりとりで「クレペリン検査」という単語が登場していたのが気になりました。そこでそちらの方で調べてみたのですが……もしかしたらアタリだったかもしれません。
 なんでもこのクレペリン検査の名にも用いられているクレペリンなる人物は今日の精神医学の基礎を築いたという精神医学者で、その業績の一つとして統合失調症の確立があったのだとか。
 つまり、回想シーンの学習塾に関するエピソードは圭一が統合失調症である事の伏線であり、特にクレペリンの名が出て来ているのは作者である竜騎士07さんがさりげなく提示したヒントだったのではないでしょうか。
 できればもうひとつくらい裏付けになるような事柄が欲しいところですが、ともかくこれらの事柄から私は圭一は統合失調症であったという事でほぼ確定であると現在のところ考えています。



TIPSのセブンスマートにて、圭一の背後にいた者は

 既に述べた通りこれは妄想だったと思っているわけですが、そうであったにしても圭一は何を見たのだろうか?
 まず、彼はこの場面で後ろを振り向いた後……

 1:目の前の「何か」をすぐには理解できていない
 2:そして理解できた瞬間に恐怖により悲鳴をあげている


 これらの事から解答はある程度搾る事ができると思います。まずは以下に、除外できると思う物を列挙してみます。

 「レナ」
 そもそも圭一はレナの可能性を考えていたわけですから、前述の条件1からして既に該当しません。

 「レナ以外の友人・知り合い等」
 もしかしたら何故その時その場所にいたのか理解できないという事で条件1は当てはまるかもしれません。しかし条件2に該当するにはちょっと無理があります。

 「知らない人」
 上と同様条件1はともかくとして、条件2が該当しづらいと思われます。

 「視覚的に恐ろしい何か」
 そうであるならば見た瞬間に悲鳴をあげるでしょう。条件1に該当しません。

 「オヤシロさま」
 圭一はオヤシロさまの外見を知りません。仮にオヤシロさまの外見が視覚的に恐ろしいものだったとしても既に述べた通り条件1に該当しません。

 「何もいなかった」
 条件ふたつとも該当しません。

 では結局一体なんだったのかというと……祟殺し編を読んでいてふと思った事があります。
 振りかえった先に居た者が圭一自身であったのならば、条件1・2共に該当するのではないでしょうか。
 もしかしたら祟殺し編における「もうひとりの圭一疑惑」や、その話を聞いた入江先生の口にした「ドッペルのおばけ」という単語はこのTIPSに関するヒントだったりして、などと思ってみたり。



背後の気配の正体は

 上の考察と合わせて考えるに、原因は自己像幻視だったのではないだろうか。要するに自分以外に自分が居るという幻覚で、統合失調症においてもこれを発症し得るようです。
 有名なドッペルゲンガーに関する数々の逸話の何割かはこれが原因だったのではないかと言われています。また、ドッペルゲンガーは見たら近い内に死ぬ、或いは死に近い者が見ると言われています。これらの特徴は、鬼隠し、祟殺し編における圭一と、綿流し編における魅音の姿をした誰か、そしてもしも死亡しているのならば悟史に関しても通じるものがあります。
 ただ、実際に見たわけではなく背後に気配を感じているだけなので完全に一致とまではいきませんが。しかし色々と似た部分があるのがかなり気になるところです。



雛見沢村と統合失調症

 以下はホトンド妄想ですが。

 外部からやってきた圭一はともかくとして、雛見沢出身の人物で、圭一と同様の症状を発症した人が何人か居ます。レナ、悟史、そして場合によっては魅音・詩音。もしも彼女達が同じく統合失調症であったのなら、と考えてみました。
 統合失調症を発症する確率は平均して1%程度だそうです。しかし同じ統合失調症でも症状の重い人ほど当然少なくなると思われます。そうなると……雛見沢村の人口が1000人強である事を考えると、同時期にこれだけ沢山、しかも重い症状に陥った人物が出てくるのは確率的に高すぎではないでしょうか?

 統合失調症は、今なおその原因がハッキリしていないのだそうです。
 遺伝的要因によるものではないかという説もあります。実際、発症している人の近親者は同じく発症する確率が少し高まるようです。
 ただし、一卵性双生児の場合でも(資料によって微妙に数値は異なりますが)50%前後。遺伝子レベルではまったく同一である双子でも100%にならないという事は、遺伝的要因は大きいが、しかし他にも何らかの要因が存在すると考えたほうが良さそうです。
 そこで有力な説として遺伝的要因と環境的要因の複合説があります。つまり、遺伝的に統合失調症の因子を持った人物が、特定の条件を満たした環境に身を置くと発症すると。
 因子が回路で環境がスイッチといったところでしょうか。これならばふたつの条件が揃わない限り発症しません。

 そこで最初の話に戻るわけですが……雛見沢村は統合失調症の遺伝的要因と環境的要因を兼ね備えた村だったとは考えられないでしょうか?
 過去には外界との交流を極力断っていた事から住人の血は当然濃くなっていったと思われます。そうなると特定の遺伝的要因が色濃く受け継がれる可能性も十分に考えられます。
 環境的要因に関しては……確かに雛見沢の環境は特殊ではありますが、肝心の統合失調症の環境的要因に関して現段階では情報不足なのでなんとも。

 ともかく、雛見沢村の住人が統合失調症を発症しやすいのだと仮定すると、色々な事が説明できるような気がするんですよね。裏付けが少ないので断定しづらくはありますが。


 以下、作成中


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